2015年版小規模企業白書を拾い読みしました。

 白書を読むが、残念ながらこの白書の位置付けが不明で、何を言いたいのか読んでみても理解しづらい。
法に基づく国会報告で「より細分化する」とも言えるが、少ない紙面で把握できるような、中小企業の社長や小規模事業者が読みたくなる白書を期待している。

  

第1部 小規模事業者の構造分析
第1章 小規模事業者の実態
第1節 小規模事業者の定義
小規模事業者について、第1-1-1図を使って定義する。
※卸売業、サービス業、小売業は常時使用する従業員の数が5人以下の事業者なら、小規模企業者であり、小企業者でもある。
「小規模事業者」には、「小規模企業」もしくは「個人事業者」が含まれる。 小規模企業白書では、法令用語以外は通常「小規模事業者」という。法令用語では「小規模企業」になる。 よって、中小企業者は「中規模事業者と小規模事業者を加えたもの」となる。

小規模事業者のわが国での割合について、「平成24年経済センサス活動調査」の「企業ベース」の値を採用して説明する(中小企業白書2015年版付属統計資料1表、21表)。
企業規模別の事業者数は全体で3,863,530者。うち小規模事業者の事業者数が3,342,814者(構成比86.5%)、中規模事業者の事業者数が510,120者、大企業者が10,596者。(「平成24年経済センサス」)
企業規模別従業者数は、全体で46,138,943人。うち小規模事業者が11,923,280人(構成比25.8%)、中規模事業者が20,244,204人、大企業が13,971,459人。
しかし、全企業規模別に占める小規模事業者の売上高構成比は10.3%(1,216千円/11,823千円)であること。
小規模事業者の多い業種(産業大分類)ベスト3は、「卸売業、小売業」で751千者、うち小売業は588千者。2位は「宿泊業、飲食サービス業」で475千者、3位は「建設業」で448千者。
従業者数の多い順は、建設業で2,338,163人、次に卸売業、小売業で2,191,498人(小売業:1,628,975人)が続き、3位は製造業で2,130,081人。

第1-1-9図では、従業者1人あたりの業種別売上高を示す。平均1,021万円に対して、建設業で1,282万円、卸売業、小売業で1,494万円。 ただ、複合サービス事業は287万円、宿泊業、飲食サービス業は276万円で、最も少ないのは教育、学習支援業の180万円である。

コラム1-1-2では「小企業者」について説明する。
小規模事業者のうち、およそ45%は常用雇用者がいない。業種では「教育、学習支援業」が71%、「不動産業、物品賃貸業」が66%、「生活関連サービス業、娯楽業」が59%の割合で常用雇用者はいない。さらに、産業小分類で分析する(第1-1-12図)。
※この節は、主として「平成24年度経済センサス」による分析である。
 
第2節 小規模事業者の多様性
産業小分類で小規模事業者数を分析する。
製造業(37万者)では金属製品製造業(5.1万者)が最も多く、機械工業が続き、生産用機械器具製造業と食料品製造業が同位で続く。
生活関連サービス業、娯楽業(36万者)では、美容業が14.6万者、理容業が10.0万者、洗濯業が3.8万者と続く。

次に、責任範囲で分けてみるものの、広く見過ぎているようだ。
小規模事業者3,342,814者のうち、個人事業者が206万者(61.8%)で、法人は128万者。
個人事業者の数とその比率が高いのは、対個人向け商品・サービスを提供する業種が多いこと。 「宿泊業、飲食サービス業」約42万者で88%、 「小売業」約41万者で70%、 「生活関連サービス業、娯楽業」32万者で88%である。

続いて、売上高と付加価値額を第1-1-28図等から分析する。
ただし、付加価値額=売上高−(売上原価+販売費及び一般管理費)+給与総額+租税公課 としている。 ※つまり、個人事業者の場合は給与が含まれていない可能性が高い。
小規模事業者全体では「卸売業、小売業」が最も高く、「卸売業」の平均売上高は11,255万円、平均付加価値額は1,598万円(14.19%)。「小売業」の平均売上高は2,432万円、平均付加価値額は604万円(24.83%)。いずれも第1-1-28図で、「電気・ガス・熱供給・水道」は省かれている。
「建設業」の平均売上高は6,686万円、平均付加価値額は1,619万円(24.21%)。 「製造業」の平均売上高は6,494万円、平均付加価値額は1,872万円(28.82%)。
「宿泊業、飲食サービス業」の平均売上高は873万円、平均付加価値額は350万円(40.09%)。 「教育、学習支援業」の平均売上高は407万円、平均付加価値額は180万円(44.22%)。 「複合サービス事業」の平均売上高は749万円、平均付加価値額は347万円(46.32%)。

個人事業者の平均売上高は963万円、平均付加価値額は393万円(40.80%)。法人の平均売上高は7,967万円、平均付加価値額は1,974万円(24.77%)。
個人事業者の従業者1人あたりの平均売上高は399万円、平均付加価値額は163万円(40.85%)。 法人の従業者1人あたりの平均売上高は1,468万円、平均付加価値額は364万円(24.79%)。
コラム1-1-4にて「個人事業者」と「法人」の違いを説明する。
※この節は、主として「平成24年度経済センサス」による分析である。これは「中小企業白書2015年版」の表21(p618)でもある。
 
第3節 小規模事業者の事業基盤
2015年1月に商工会・商工会議所会員の小規模事業者に行ったWebアンケート調査(5,874者)による「人材」「事業資産」「資金」「支援体制」を分析する。 特徴は、親族従業者の割合が高い(従業者数の7割が経営者本人・親族である)。
事業収入以外の収入も併せて生計を立てているのが約4割。「年金」「家族の収入」「不動産賃料」など。 従業員は会社や事業に「貢献している」割合は9割。
従業者の人材像(p47)、経営者の実像(p51)、事業承継(p52)にも触れる。

経営者の実労働時間は、8時間超が56.5%ある(第1-1-50図)。一般労働者の平均実労働時間は7時間42分(p52)なのに。 ただ、第1-1-51図では、日曜日のみの休日が不明である。
事業承継に躊躇する理由として、第1-1-56図で示すが複数回答であることに留意が必要。 内容は、 「厳しい経営環境下で事業を引き継ぐことへの躊躇」が65.7%、 「事業を引き継いだ後の、収入・生活面での不安」が57.5%、 「事業を引き継ぐことに躊躇も不安もない」22.3%である。
コラム1-1-6では小規模企業共済制度の見直しに触れる。
このあと、事業用資金、資金調達を分析するが、政府系金融機関に依存する姿が見えてくる。
この節は「小規模事業者の事業活動の実態把握調査」(2015年1月)による分析も含まれている。
 
第2章 小規模事業者の動向
第1節 小規模事業者数及び事業所数の推移等
小規模事業者数の推移は、昭和61年(1986年)の4,765,844者をピークに減少し、平成24年(2012年)に3,342,814者に。(29.8%減)
中小企業数の推移は、おなじく昭和61年(1986年)の5,327,128者をピークに減少し、平成24年(2012年)に3,852,934者に。(27.6%減)
大企業数の推移は、おなじく昭和61年(1986年)の24,119者をピークに減少し、平成24年(2012年)に10,596者に。(56.0%減)
※昭和61年の数値は、中小企業白書2001年版の付属統計資料1表の企業ベースより。
主として「平成24年度経済センサス」による分析
 
第2節 小規模事業者の増減の背景
ここは、アプライドリサーチ研究所のデータ 「小規模事業者の事業活動の実態把握調査」(2015年1月)による分析である。
※創業時期によって 創業世代を二つに分けて事業について分析するも、ここ30年間の経済変動のみしか検討せず、結果として「バブル経済期が最も好調だったとする事業者が多い」となってしまう。 せっかく貴重なアンケートを取得できたのに、もう少しマクロで見てほしかった。
「事業の好調・不調」について時期、要因、生計ごとに分析する。
※第1-2-9図の対象者は、1980年代以前に創業した小規模事業者と1990年代以降に創業した小規模事業者に分けて分析するが、「生き延びた者」のみであり、時代背景の違いへの分析が不足している。
※前の第1-1-47図(p51)は、対象者は5866者で、1940年代前から2010年代の10年単位8区分で創業している。1940年代前が980者、1970年代が951者と続く。このあたりを加味できなかったのか。
 
第3章 小規模事業者の未来
第1節 効果的な経営力の向上に向けて
本節の冒頭で、「差の拡大は、低収益の中規模企業・小規模企業の収益悪化によって生じている面もある」(p82)とするが、 「低収益中小企業が足を引っ張る」と読めてしまうのは悲しい。
第1-3-1図は、「中小企業白書2015年版」の第1-3-8図の一部(全産業の部分)である。しかし、その分析と論評は「中小企業白書2015年版」のそれと違う。
さらに、当節の内容は「中小企業白書2014年版」から図を引用して分析する。「中小企業でなく小規模事業者の立場」とでも言いたいのか。
例として、本節の第1-3-3図は「中小企業白書2014年版」の第3-1-27図(p168)そのもので、識別カラーを変えている(見づらくなっている)。 さらに、分析の文章の文言も同じようだ。細かく確認していないが、皆さんで「コピペ」なのか確認していただきたい。

また、「小規模事業者持続化補助金」の成果を説明しながら、利用した小規模事業者の半分以上が「初めて経営計画を作成した」としている。 対象はおよそ5200者。
さらに、コラム1-3-1でその補助金を説明し、おおむね75万円の持続化計画に対して50万円を補助できると読める。また、「成果が出ている」とする。
※ここでの「経営計画」はいったいどのような尺度のものか?はなはだ疑問である。

ページ97では、自社の利益を確保するための取組みを分析する。ここでは、売り上げを伸ばす販路開拓と切り離して別のアンケートを分析対象にし、 「一定の利益の確保という後ろ盾があってはじめて、販路開拓にも心置きなく乗り出せる」とする。
※この分析と論述は、おかしいのでは。
 
第2節 新しい働き方
「フリーランス」について分析する。「フリーランス」は「自らが持つ技術や技能、スキルを拠り所に、組織に属さず個人で活動する」としている。

事業を営む業界・業種
アンケート回答で、事業を営む業種では「専門・技術サービス業」「情報通信業」が続き、職種では「ITエンジニア」「その他専門技術職」と続く。

実態
回答者の年齢は50代(38.3%)、40代(36.3%)、30代(10.95)らが占め、回答者の8割が(副業でなく)主業、さらに10年以上働いているとする割合が49%で最も多いという。 フリーランスという働き方を意識したきっかけは、「前職を退職した」が44.0%で最も多く、「自分自身の力を試したい」が22.1%で続く。 さらに、フリーランスとして働いている理由として「仕事をする時間や場所の自由度がある」が70.1%で最も多く、「自分の好きな仕事をできる」が64.4%で続く。 このようにフリーランスとして働くのは自由度が高く、やりがいもあり、生活との両立も満足しているとする割合が6割を超える。しかし、収入や社会評価については満足していない。 フリーランスの顧客はその多くが固定客であり、(占める割合が7割以上とする回答が半数近く)、顧客獲得の方法は「既存客からの紹介」「自分から営業活動」「友人等の紹介」が多い。 必要な知識・技能は「自分で身に付けた」のが67.5%と大半である。

相談先・支援先
今まで「特に支援を受けたことはない」し、今後は「特に支援を受けたいと思わない」のが6割を超え、ダントツ。
ここは同じくアプライドリサーチ研究所の「小規模事業者の事業活動の実態把握調査〜フリーランス事業者調査編」(2015年2月のWebアンケート調査で、約800者)による分析である。
 
第3節 事業承継に伴う新たな取組み
「事業承継時の年齢が若いほど、経営確認への取り組みがあるほど業績が改善している」としている。
 
第4節 まとめ
 
第4章 地域の中の小規模事業者
第1節 地域における消費の現状
地域における小売業の現状
地域では人口が減少し、小売事業所が減り、大都市圏以外では小売業の従業員も減る。よって、小売業の年間販売額は1997年以降増加傾向にない。
また、小規模店舗は減少する一方で、中規模・大規模店舗は増加している。
小規模事業者からの商品・サービス購入と商店街の現状

小規模事業者が提供する商品・サービスにはあまり満足していない(第1-4-9図)。

また、魅力ある商店や商店街がないのが商店街に行かない理由である。
第1-4-14図を分析しながら、「商店街の知恵と工夫次第では、商店街の活性化が図れる可能性がある」としている。
 
第2節 地域における小規模事業者の役割
第1-4-15図で「地域活性化のために地域住民の果たす役割が重要」とし、その取組みで雇用を生み出すと導く。
前項で導く地域活性化や地域課題解決には、「地域リーダーが必要」とする。 その地域リーダーは、定年退職のシニア層あるいは地域の事業者であるとする。
ここで、地域事業者≒小規模事業者として、「小規模事業者の地域経済への貢献度」を第1-4-23図で示し、 「貢献していないと感じている者が多い」とする。
そして、小規模事業者は「地域のお祭り、イベント」には参加しており、「消防団・防犯活動」を加えた地域活動について一定の評価をされているとする。
 
第2部 小規模事業者の挑戦
第1章 需要を見据えた経営の促進
 
第1節 自らの強みを認識した需要の創造・掘り起こしに取り組んでいる事例
 
第2節 経営計画により具体的に効果を発現した事例
 
第3節 信頼関係に根ざした地域需要の掘り起こしに取り組んでいる事例
 
第2章 新陳代謝の促進
 
第1節 起業・創業に成功した事例
 
第2節 農商工連携や産学官連携により製品開発に取り組んでいる事例
 
第3節 異業種転換や新事業展開により販路開拓に取り組んでいる事例
 
第3章 地域経済の活性化に資する事業活動の推進
 
第1節 地域社会への貢献性に意義や価値観を見出している事例
 
第2節 地域ブランド化や地域ブランドを活用した事例に取り組んでいる事例
 
第3節 地域振興や賑わいの創出に取り組んでいる事例
 
第4章 地域ぐるみで総力を挙げた支援体制の整備
 
第1節 経営指導員による支援の事例
 
第2節 よろずコーディネーターによる支援の事例
 


【TEAM】小規模企業白書2015年版は、副題を「はばたけ! 小規模事業者」として平成27年7月に新たに発行されました。
総ページ数399で、2部構成ながらも2部は事例紹介が中心。また、前年に講じた施策、当年に講じようとしている施策も掲載されているが、内容は中小企業白書と重複する部分が多く、識別に苦労する(違うところがどこなのかTEAMは理解できていない)。

 
【欄外】
中小企業経営者・小規模事業者が読みたくなる白書(国会報告)を期待するのは間違いであろうか?
 
(注)※のところは主観ですが、それ以外にも主観などが含まれています。2016. 6.15

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