財務部分の学習ノート表紙

             −目 次−  凡例:[page]

6.キャッシュフロー(CF)…………………………………………………………………………………1
(1) CFの種類と算出[1]     CFの概念、営業CF、投資CF、財務CF
(2) CFマネジメント[4]     フリーCF、運転資金の管理、CF関連比率

7.資金調達と配当政策……………………………………………………………………………………7
(1) 資金調達の形態[7]  内部金融と外部金融、直接金融と間接金融
                     自己資本と他人資本、企業間信用、リース
(2) 資本コスト[9]   借入金のコスト、社債のコスト、普通株式のコスト
                     剰余金のコスト、加重平均資本コスト
(3) 配当政策[11]    配当の種類、配当性向、配当政策の効果
(4) 最適資本構成[12]  財務レバレッジ、モジリアーニ・ミラー(MM)理論

8.投資決定…………………………………………………………………………………………………14
(1) 貨幣の時間価値と割引キャッシュフロー(DCF)[14]
(2) 投資評価基準[16]  回収期間法、会計的投資利益率法
                     内部収益率(IRR法)、正味現在価値(NPV)法
                     収益性指数法
(3) 不確実性下の投資決定[18]  リアル・オプション

9.証券投資論………………………………………………………………………………………………19
(1) ポートフォリオ理論[19]    ポートフォリオのリスクとリターン
                          効率的ポートフォリオ
                          最適ポートフォリオの選択
(2) 資本市場理論[22]      資本資産評価モデル(CAPM)の理論、指数モデル
                          CAPMと財務決定

10.企業価値…………………………………………………………………………………………………23
(1) 株価の算定[23]    配当割引モデル、株価収益率、株価純資産倍率
                      株価キャッシュフロー倍率
(2) 企業価値評価モデル[24]
                    割引超過利益モデル、割引キャッシュフローモデル
(3) 企業合併・買収における企業評価[25]
                    収益還元方式、純資産方式、市場株価比較方式

11.デリバティブとリスク管理……………………………………………………………………………27
(1) リスクの種類[27]
(2) オプション取引[28]    コールオプション、プットオプション
(3) 先物取引[29]      先物為替予約、通貨先物取引
(4) スワップ[29]      金利スワップ、通貨スワップ

12.その他財務・会計に関する事項………………………………………………………………………30

参考図書
リンクの参考資料 p1〜p10
※過去問題へのリンク文の「★」は計算問題を示す。
6.キャッシュ・フロー(CF) (1)キャッシュ・フローの種類と算出 (イ)CFの概念  キャッシュ・フローは、「現金および現金同等物」を対象にし、「現金」は普通預金・当座預金など金融機関への要求払預金も含む。「現金同等物」は、容易に換金可能で価値の変動はわずかなリスクしか負わない短期投資を指し、取得日から満期日または償還日までの期間が3ヶ月以内の短期投資(定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパーなど)を含む。株式は価格変動リスクが高いので現金同等物には含まない。 キャッシュフロー計算書  キャッシュフロー計算書は、一会計期間のキャッシュ・フローの状況を一定の活動区分別に表示するものである。活動区分は営業活動、投資活動、財務活動の3つに分けて表示することで意思決定に有用な情報を提供するものになっている。  キャッシュ・フロー計算書の構造は、活動ごとに区分して表示・集計された正味の資金状況を合計し、この合計が期中における現金および現金同等物の増減となり、期末の資金残高になる。(結果として、当該期間の貸借対照表における「現金及び預金」の期首残高と期末残高の差額に等しくなる。)   (ロ)営業CF  営業活動は、営業損益計算の対象となった取引からのキャッシュ・フローを示す。「営業収入」「原材料又は商品の仕入による支出」「人件費の支出」「その他」に分けて総額により表示する。 計算書の表示方法は、直接法間接法の2つがある。直接法は主要取引を総額で表示する方法。間接法は税引前当期純損益に必要な調整項目を加減して求める方法。 通常、「利息及び配当金の受取額」「利息の支払額」の表示も行う。 直接法・間接法   (ハ)投資CF  「有価証券の取得による支出」「有価証券の売却による収入」「有形固定資産の取得による支出」「有形固定資産の売却による収入」「投資有価証券の取得による支出」「投資有価証券の売却による収入」「貸付による支出」「貸付金の回収による収入」「その他」(有価証券は現金同等物を除く)で主要な取引を表示する。 現金および現金同等物を対価とする事業の譲受・譲渡または合併等も投資活動に表示する。   (ニ)財務CF  「短期借入れによる収入」「短期借入金の返済による支出」「長期借入れによる収入」「長期借入金の返済による支出」「社債の発行による収入」「社債の償還による支出」「株式の発行による収入」「自己株式の取得による支出」「その他」の科目で主要な取引を表示する。 「配当金の支払額」の表示も行う。  
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キャッシュフロー計算書 (表記は簡略化) ●営業活動 (間接法) \念き前当期純利益 非資金項目を加算             ※減価償却費、貸倒引当金、退職給与引当金 (特別損益の控除) 8把蟷饂最箋兮傘彭              ※売却益は減算、売却損は加算 (営業外損益の控除) け超罰絢益:受取利息及び受取配当金の戻し出し ※減算 ケ超罰鞍駘僉Щ拱利息・割引料の戻し入れ    ※加算 (B/Sから修正) η箴綺銚∩減の修正              ※期首からの増加分は減算 棚卸資産増減の修正              ※期首からの増加分は減算 ┿兎債務増減の修正              ※期首からの増加分は加算 (その他修正)                ※支払分は加算      小 計(間接法) (Trueの表示) 法人税の支払い                ※未払い法人税の加減 利息等の受取額                ※未収利息、前受利息を加減して実額算出 利息等の支払額                ※前払利息、未払利息を加減して実額算出 損害賠償等(営業関係)            ※特別損失は減算、特別利益は加算    営業活動によるキャッシュフロー    合計 (直接法) 売上収入    純売上高−売上債権増加額 仕入支出    純当期仕入高+仕入債務減少額          当期仕入高=売上原価−期末在庫減少高 人件費支出   人件費(役員賞与を含む)−退職給与引当金増加額 その他営業費  営業費−貸倒引当金増加額±未払費用・前払費用      小計(ここまで直接法) 以下は間接法の(Trueの表示)と同じ ●投資活動 有価証券の取得による支出 有価証券の売却による収入 有形固定資産の取得による支出 有形固定資産の売却による収入  ※他に「子会社株式の取得による支出」等もある。    投資活動によるキャッシュフロー    合計 ●財務活動 短期借入金の収入・支出 長期借入金の収入・支出 社債・株式等の収入・支出 配当金支出    財務活動によるキャッシュフロー    合計 現金及び現金同等物の増減額 現金及び現金同等物の期首残高 現金及び現金同等物の期末残高  
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営業活動によるキャッシュフロー算出のまとめ 直接法の算出:※営業収入から仕入支出等を控除する。減価償却費は考慮しない 営業収入(売上高−売上債権増加額) 仕入支出(当期仕入高−仕入債務増加額)  当期仕入高=期末在庫+売上原価 人件費支出(人件費+役員報酬・賞与+退職給付引当金) その他営業支出(その他営業費−貸倒引当金増額±未払・前払費用増減額)   小計 間接法の算出:税引前当期純利益から以下を加減 “鷸餠眸駘僂僚だ機Ц魂曾却費、各種引当金 ※非資金費用=キャッシュアウトにならない費用科目 営業取引以外の控除(損益計算書科目の修正) 特別損益と営業外損益の控除(営業利益まで遡る) B濕畋仂班讐別椶僚だ機帖椎箴綺銚◆棚卸資産、仕入債務など   小計   ぞ計後に、実際に支払った法人税や利息及び実際に受け取った利息・配当金に戻す   【過去問H16-2:現金同等物】 【過去問H17-11:現金同等物】 【過去問H16-13:★キャッシュ・フロー計算書(直接法)】 【過去問H18-6:★仕訳からキャッシュ・フロー計算】   H25-4:キャッシュ・フロー計算書(現金同等物とは) ★ H25-12:キャッシュ・フロー計算書(現金の増加要因) H26-13:★キャッシュ・フロー(FCF) H27-9:キャッシュ・フロー(減少要因) H29-13:CFの種類と算出(営業活動CF)  
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(2)CFマネジメント キャッシュの流れ情報 営業活動によるキャッシュ・フローでは、営業活動から得られたキャッシュから正味の運転資本に充てた残りが示され、正味の固定資産投資または有価証券投資に充てた(運用した)残りが投資活動によるキャッシュ・フローに示される。(この段階でFCF) 財務活動によるキャッシュ・フローでは、配当の支払いとともに資金調達状況の結果を示す。 CFマネジメント調達・運用・資金化の3つのバランスを管理する(調達した資金を運用して調達以上の資金化を速く行う)こと。 (イ)フリーCF(FCF) フリー・キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローから投資に必要なキャッシュ・フローを除いたもので、株主・債権者へ自由に分配できるキャッシュ・フロー。 その算出は、(経常利益+支払利息)×(1−税率)+減価償却費−運転資本増加額−資本的支出 で求める。(=税引後営業利益 + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本需要。) 簡便的に「営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー」とすることがある。 FCF=営業活動によるCF+投資活動によるCF FCV(企業価値)=予測期間中のFCFの現在価値+予測期間以降のFCFの現在価値          =予測期間の翌年のFCF÷(加重平均資本コスト−FCFの永久成長率) ※通常、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスのため上記のように「加えたもの」になるが、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを除いたもの、つまり「投資活動をした後の残り」と記憶しておきたい。 ※一般に定義が確定しているわけではないが、当該試験ではこのフリー・キャッシュ・フローが使われている。ただし、投資決定では「税引き後利益+減価償却費」とされるケースがある。   CFイメージ図    
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(ロ)運転資金の管理  資金は目的別に、運転資金と設備資金に分けられる。運転資金は、商品や原材料等の購入、製品の販売・回収等に充てられる資金であって、貸借対照表の流動資産にかかわる資金なので日常的に循環する性質をもつ。他方、設備資金は、固定資産の取得に充当される資金であって、一度投下されると長期間回収することができない性質がある。  運転資金のうち、現金、当座預金、その他要求払預金を現金資金と呼び、運転資金の管理において別途詳細に管理している。 利用する資金表(運転資金を主に) 資金管理を支える資金表は、資金運用表を元にして、月次損益予算表、月次現金収支表などで構成する。 資金運用表 一定期間の資金の源泉と運用(使途)を表したもので、正味運転資金の増減とその原因を表記することになる。2期(年度や月度)の比較貸借対照表から増減を導き、修正(非資金取引の控除)を加えて今期の運転資金と固定資金を明確にする。それを資金の源泉・資金の運用・正味運転資金の増減で表す。 年間資金計画表年間の資金計画で、資金の源泉・資金の運用・正味運転資金の増加原因を表す。予算による資金運用表といえる。 月次損益予算表月次の損益予算計算書であり、これを元に年間資金計画表を作成する。 月次現金収支表月次の現金の収支及び有高を表す。 正味運転資本(資金)増加=流動資産の増加額−流動負債の増加額             =(今期流動資産−前期流動資産)−(今期流動負債−前期流動負債) ※正味運転資金流動資産と流動負債の差額。通常、流動資産−流動負債で求める。貸借対照表の構造より、固定負債に自己資本を加えたものから固定資産を除いたものとしても求められる。   正味運転資本  
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(ハ)CF関連比率 営業活動によるキャッシュ・フロー(CFO)の分析 固定負債の大きさ……CFO÷固定負債で、固定負債の返済余力を示す。 利益とのずれ……CFO÷経常利益で利益の質の評価ができる。 財務構造の変化……CFO÷設備投資は財務構造の変化の方向を示す。 キャッシュ・フロー投下資本比率……CFROI=キャッシュ・フロー÷投下資本 ※CF版ROI 債務償還年数……キャッシュ・フローで有利子負債を返済できる年数 インタレスト・カバレッジ・レシオ……キャッシュ・フローが利払いの何倍にあるか 株価CF倍率 株価CF倍率=株価÷1株当たりのCF で表され、株価がCFの何倍にあるかを示す。 1株当たりのCFは、純利益+減価償却費または純利益+減価償却費−配当金とされるようだ。 ※株価収益率の場合は、分母に純利益を使うが、減価償却費は当然ながら含まれていない。 増加運転資本=流動資産増加高 − 流動負債増加高  ※正味運転資本と同意とされている。       =(期末流動資産−期末流動負債)−(期首流動資産−期首流動負債)       =期末流動資産増加額−期首流動負債増加額     (=月商増加額×売上債権回転期間(月)×棚卸資産回転期間(月)×仕入債務回転期間(月))   キャッシュ・フロー計算書による経営  キャッシュ・フロー計算書は売上債権の増加、たな卸資産の増加など正味運転資本の増加に伴う資金負担が及ぼす経営への影響を知ることができる。  さらにキャッシュ・フロー計算書からキャッシュを生み出す能力、成長のための投資動向、利払いなどの支払い能力等を見出すことができる。営業活動によるキャッシュ・フローの小計段階(間接法表示)では、事業活動のみでキャッシュを生み出せているか、さらに利払いなどの短期債務を継続的に支払う能力があるかの情報が得られる。投資活動によるキャッシュ・フローでは将来の成長のためにどれだけ投資が行なわれているかを知るとともに、財務活動によるキャッシュ・フローも見ながら投資資金の外部調達程度が明らかになってくる。 営業活動によるキャッシュ・フロー:確実にプラスのこと 当期利益の増加……付加価値の向上、売上債権の減少、棚卸資産の減少、(仕入債務の増加) 投資活動によるキャッシュ・フロー:プライオリティ 投資目的の明確化 ヾ存事業(維持又は拡大あるいは縮小) ⊃景野の事業(積極的投資) 財務活動によるキャッシュ・フロー:安定化改善 借入は返済し、社債は確実に償還、株式は還元する   【過去問H19-13:★CF(通期の売上・仕入のCF)】  
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7.資金調達と配当政策 (1) 資金調達の形態 (イ)内部金融と外部金融 資金調達源を資本の源泉として企業内部とする場合を内部金融、資金調達源を企業外部に求める場合は外部金融に分ける。 内部金融の例は、減価償却費、内部留保等である。内部留保を厚くすれば外部金融への依存度は低下するが、利益の適切な配分が行われなく買収の危険が伴う。 外部金融の例は、企業間信用(支払手形・買掛金など)、間接金融(長短借入・手形割引・手形借入・証書借入など)、直接金融(社債発行・株式発行など)がある。しかし、資金調達の機動性が低く、配当や利息の支払いのための資金が必要になる。   (ロ)直接金融と間接金融 直接金融は、株式、社債(普通社債、新株予約権付社債)、コマーシャル・ペーパー(CP)など。約束手形は直接金融になる。しかし、直接金融は格付けやディスクロージャーを要し、調達期間や調達の手続きが必要になり、株主が緊急性を感じると投資リスクになりやすい。 間接金融は、金融機関等からの借入れなど。手形割引は間接金融になる。調達の機動性が高く、財務情報はその金融機関(借入れ先)だけですむ。 ※直接金融とは、直接証券だけが発行される最終的貸し手から最終的借り手への金融(貨幣移動)のこと。直接証券は、最終的借り手が発行した社債や手形などの証券をいう。 ※一般的に株式や社債は直接金融といわれる。ただ、これらの最終的買い手が個人・個人投資家でなく銀行だとすると間接金融といえる。つまり、直接金融だけでは資金調達を賄うことができないことを示している。 ※間接金融とは、直接証券と間接証券が発行される最終的貸し手から最終的借り手への金融。間接証券は、金融を仲介する者(金融機関など)が発行する証券。企業が銀行から借り入れする場合は、最終的貸し手には預金通帳(預金証券)が銀行から発行されている。 ※間接金融は間接証券を発行することで仲介者の金融仲介機能が働いている。   (ハ)自己資本と他人資本 自己資本は返済義務を負わない。 自己資本の増加を伴う資金調達を「エクイティ・ファイナンス(Equity Finance)」と呼ぶ。具体例は、時価発行増資、新株予約権付社債発行など。 (a)増資 有償増資投資家から払込金を得て新株を発行。発行は株主割当、第三者割当、公募等。 無償増資資本準備金や利益準備金を資本に組み入れて新株を発行(投資家の払込金なし)する。目的は資本構成改善及び利益還元等。 (b)新株予約権 株式の移転を受ける権利。権利行使時に会社が新株を発行する、または自己株式を移転する義務を負う。 単独発行(社債を付さない)可能。新株予約権と普通社債を同時に募集して割り当てることも可能。 (c)新株予約権付社債……新株予約権+社債。分離譲渡はできない。 他人資本は、株主以外からの資金調達をいう。負債である。 借り入れ、普通社債発行などをデッド・ファイナンス(Debt Finance)と呼ぶ。返済を要すために「結果的に負債の増加」になるが、「支払利息の損金算入」により税務上のメリットがある。  
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(ニ)企業間信用 企業の取引先との商取引に関連して授受する信用による金融で、商業信用ともいう。企業間信用は、売上債権と買入債務の関係で支払手形・買掛金などが対象。   (ホ)リース 賃借人と貸与者の2者間の契約で、賃借人は資産を利用する権利を有し、その見返りに賃借料金を貸与者に定期的に支払う。貸与者は当該資産を賃借人に貸し与える。 リース契約の資産は固定資産にならず、賃借料金は会計上経費として扱うことを可能にする。税法上も損金扱いになる。長期のリースは資金調達の役割を果たす。 種類  ※賃借人のリース期間が当該資産の経済寿命を全うするか否か ファイナンス・リース(企業が資産を購入せずに)リース会社より資産を賃借する取引。実質的に購入した場合の総額を払う。賃借者が当該資産の維持・メンテナンスを行なうし、当該資産は完全に償却可能。 オペレーティング・リース一時的な期間のみ資産を借りるが、資産のメンテナンスはリース会社が行う。利点は、固定資産にする場合に比べて技術変化への陳腐化を防げる。 リース会計 「例外規定」を廃止(2009年3月期より適用)し、借り手の資産計上が必要。 H25-13:資金調達の形態(ファイナンス・リース) H28-4:[貸借対照表]ファイナンス・リース※解説は「財務」のノートに   資金調達関連用語 社債株式会社が発行する証券。普通社債と新株予約権付社債がある。 普通社債利子をあらかじめ定められた期間ごとに支払い、あらかじめ定められた期間(満期)になると額面価格(償還価格)で買い戻される。 新株予約権付社債発行株式会社の株式を一定の条件で取得できる権利が付された社債。 社債発行発行価額により3種類ある。(寝組行(額面と同じ)、割引発行、B琶眸行(額面より高い) ワラント債新株引受権付社債(所定の数または額の新株を一定価格で請求できる)。権利行使後に負債をそのままにして自己資本を増加させる。 預託証券日本企業が海外で株式を発行し流通させるために発行が必要になる証券で、現株券の代替的な役割を担う。DR:depository receipt インパクトローン資金使途に制限がない外貨借入れ。impact loan 資金調達の検討項目コスト・容易性・安全性(経営への介入など)・期間など。 譲渡性定期預金(CD)譲渡可能な定期預金(Negotiable Certificate of Depost:CD)で、銀行が発行する大口定期預金。これを購入した者はCDの流通市場で売却ができ、短期の資金を調達できる。その流通市場では一定期日後に一定の価格で買い戻すことを条件に売買される。   資金調達関連:証券発行、証券化 H28-10:[資金調達の形態]直接金融と間接金融 H29-12:資金調達の形態(長期借入金) H29-14:資金調達の形態(外部金融・内部金融)  
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(2) 資本コスト 資本コストの役割 資本コストは、資本を調達するのに必要なコストであるとともに、次の役割をもつ。〇駛椶魃人僂垢襪箸に要求される最低利益率、投資を計画するときに可否の判断となる却下率、7弍弔量槁戸益率、じ什濂礎佑乏笋螳く利子率、等。したがって、資本調達のみならず意思決定にかかわる重要な意味をもつことになる。 企業の資本は、買掛金、借入金、社債、資本金、剰余金等で構成される。資本それぞれに資本コストがあるが、ここでは資本の出し手を債権者と株主に二分して考える。つまり、資本コストは負債コストと株主資本コストで構成する。 資本コスト 計算に当たり、資本コストを企業の立場で考えるかそれとも資本提供者の立場で考えるか、あるいは企業目的を株主の投資価値の最大化とするかそれとも企業自体の利益の極大化とするか、等によって計算方法は異なる。特に、普通株式のコスト算定に差が生じやすい。 ここでは、資本構成要素それぞれのコストを算出した後、資本構成のウエイトづけをして全体の資本コストを導く方法を使う。 資金(資本)の調達コスト=負債のコスト+株主資本のコスト 負債コスト(資金調達への利子支払)=借入金のコスト+社債のコスト(最終利回りを買う) 借入金のコスト=利子率×(1−税率)×負債額  ※節税効果あり 社債のコスト=最終利回り 株主資本のコスト(期待収益率)=普通株式のコスト+剰余金のコスト (イ)借入金のコスト 一般に使われるのが実質金利。これは、利息の支払額から(その借入に関係する)利息の受取額を控除した実質支払利息を借入金総額で除して求める。(利息の支払額−利息の受取額)÷借入金総額。支払利息は損金処理できるため節税効果がある。   (ロ)社債のコスト 通常、社債の発行から償還までに要した利息や費用を実質発行額で除して求める。(社債利息+期間費用)÷{(発行価額−発行割引額)×発行数}。   (ハ)普通株式のコスト 企業の立場からは配当利回りを、資本提供者の対場では収益利回りを採用する場合が多い。※節税効果あり   (ニ)剰余金のコスト 内部留保の資本コストに相当するが、資金調達面では機動性が高い自己金融なので機会原価として考える。一般には借入金のコストを用いる。  
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(ホ)加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Cost of Capital) 各コストに対して、資本構成比で加重平均する。資本構造により(大きく)異なる。概ね資金の調達レートを表している。 平均資本コスト =(借入金の構成比×借入金コスト)+(社債の構成比×社債コスト)+(株式の構成比×株式コスト)+(自己金融の構成比×自己金融コスト) 加重平均資本コスト=負債の構成比×負債コスト×節税効果+株主資本の構成比×株主資本コスト          = {D÷(D+E)}×rD ×(1-t) + {E÷(D+E)}×rE    但し、D:負債、E:資本、rD:負債コスト、t:税率、rE:資本コスト ※株主資本コスト(rE)は、CAPM(rE=Rf+β(RM-Rf))を使う場合、配当割引モデルの「rE=D1÷P0 + g」を使う、等がある。※コスト=期待収益率   リスクフリーレート……リスクゼロの投資に対する期待収益率、通常国債の利回り、安全利子率 負債コスト……(リスクフリーレート+信用リスクプレミアム)×(1−実効税率)   資本コストの算出例 設備投資の資金調達を借入金と内部留保で賄うケース ……設備投資の加重平均資本コストは?…… 設定:ある企業が設備投資の資金調達を借入金60%、内部留保40%で行う計画をしている。借入金の借入金利は5%、内部留保の平均コストはCAPMを使用する。安全利子率Rfは2%、マーケットの期待収益率RMは6%、企業のリスクプレミアムβは1.5とする。なお、税率は40%とする。 CAPM=Rf+β(RM−Rf)より内部留保の資本コストは8%。 借入金の税引後のコストは、5%×(1−税率)=3%。これは負債(借入)利用によって税金の支払が少なくなるから。 合計の資本コスト 加重平均資本コスト=(借入金コスト×割合)+(内部留保の資本コスト×割合)          =3%×0.6+8%×0.4 =5.0% (資金調達コスト) 結果:全額内部留保による資金調達なら8%、全額借入金なら3%(但し、ROEが減少して返済負担が増加する)。 CAPMは資本市場理論の項を参照   【過去問H17-14:★加重平均資本コスト】 【過去問H18-14:★株主資本を求める】 【過去問H19-17:★会社設立時の資金調達(資本コスト≒自己資本比率)】 H25-14:★資本コスト(加重平均資本コスト) H27-14:★加重平均資本コスト H28-14:[加重平均資本コスト]WACC H29-24:★資本コスト(WACC)  
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(3) 配当政策 (イ)配当の種類 配当政策の種類配当なし、現金配当(通常の配当)、自社株買い、株主優待制度がある。 ※配当なしでも基本的に株主の資産価値は変わらない。また、利益を得て現金配当する代わりに、内部留保しても株主価値は変わらない(MM配当無関連命(取引コストや税金は考慮しない)) バランス:利益=配当+投資 配当種類:安定配当、安定配当+特別配当、安定配当+株式配当などさまざま。   (ロ)配当性向 当期純利益に占める配当金の割合を配当性向といい、配当金総額÷当期純利益×100%で求める。   (ハ)配当政策の効果 企業が株主利益の増大を目標とするなら、配当の目的は「株価を最大にする」のが最適配当政策といえる。 しかし、企業は将来のキャッシュ・フローを獲得するために投資を計画・実施しなければならない。その投資資金の源泉は利益である。したがって、当期の税引後利益が過去の投資活動によるものであることを考えれば、投資支出を優先したいので場合によっては無配になるかもしれない。 このように考えると、投資と配当のバランスに配慮した配当政策なら、株主が(企業価値で)その企業を判断する情報になる。 配当政策で重要なのは、配当支払の継続性と安定性を重視する配当安定化政策である。具体的には配当率の安定化と配当分配率の安定化である。   配当政策と資本効率 日本の株式流通市場では、配当のシグナリング効果が株価に影響を及ぼしているが、配当政策は、配当性向のみならず自己資本利益率(ROE)にも注目したい。「配当によって自己資本を減じ、ROEを高める」こともあるわけである。
また、自己資本配当率(DOE)は資本効率と株主還元を表し、配当総額を自己資本で除したもの。これは、ROEと配当性向を乗じたものに分解できる。資本効率の面では自社株買いも効果があるとされている。
  「配当政策は資本コストの一部である」とする考え方もある。 内部留保を、NPVがプラスのプロジェクトへ投資すると理論株価(株主価値)は上昇する。 NPVがプラスのプロジェクトがあるのなら配当を見送り、そのプロジェクトに投資すべし。特に成長企業なら。 なぜなら、内部資金で迅速に対応できるから。(借入ではタイミングを逃す場合も) H27-12:利益還元政策  
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(4) 最適資本構成 最適資本構成は、資本コストが最小となる資本構成で、企業価値を最大化する資本構成。 (イ)財務レバレッジ 資本構成で負債の割合を高めていくと、財務リスク(*1)も大きくなる。これを財務レバレッジとよぶ。 財務レバレッジ=総資本÷自己資本 ……自己資本比率の逆数 財務レバレッジ効果 負債を利用すると、ROE(自己資本利益率)やEPS(一株当たり利益)が変化する。どのように変化するか。  負債利子率<総資本営業利益率 のとき負債割合を高めていくとROEは高くなる  負債利子率=総資本営業利益率 のときROA=ROE  ROA:総資本営業利益率  負債利子率>総資本営業利益率 のときROA>ROE  逆レバレッジ効果 この意味するところは、負債割合を高めていくとROEは大きくなるが負債利息の支払いが生じているので、営業利益が変動したときROAが負債利子率より低くなると、ROEはROAを下回りマイナスになり財務リスクが拡大する。 税引前利益ROE =ROA+(ROA-i)×D÷E    i:利子率、D:負債、E:株主資本 (*1)財務リスク:総資本営業利益率に対するROEの変化幅など財務上のリスク(一般に、フィナンシャル・リスクといわれる。ここでは、企業活動によって引き起こされるビジネス・リスクと分けて考えている)  
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(ロ)モジリアーニ・ミラー(MM)理論 MM理論(モジリアーニとミラー:Modigliani, F. and Miller,M. による理論) 「完全資本市場の下では、企業価値(企業の市場価値)は資本構成の影響を受けない」 前提:完全資本市場の定義……金融・資本市場が完全競争市場であること。 ‐霾鵑魯灰好箸覆靴濃臆端圓飽賤佑帽圓渡る ⊆莪規制や取引費用がない 税金がない ぞι覆領動性が十分高い セ臆端圈陛蟷餡函砲蝋舁的行動をとる 利子率は定まっている。 企業の投資計画などは定まっており、株主の資産価値を最大にすることのみの財務決定だけが残っている。 MM理論はこれらを前提に自己資本100%の企業と、負債も資本に加えた企業の市場価値を比較して説明している。 実際の市場における最適資本構成  実際は、税金もあるし、裁定取引が行われている。また、企業が倒産する可能性もある。しかし、本質的なメカニズムは共通。 自己資本100%の企業価値=負債も資本も加えた企業の市場価値−税率×負債額 つまり、負債も資本に加えた企業の市場価値 > 自己資本100%の企業価値 で、資本構成の影響を受ける。具体的には  ”藝弔ある場合は節税効果が生じる →ある程度の負債が有効  負債割合による負債調達コスト(リスクプレミアム)の影響……負債調達コストの程度 リスクプレミアムを、格付けによる社債利回りで判断する (参考)負債割合20%以内  AAA   負債割合50%超  BBB以下  「自己資本比率の上昇(低下)は株主収益のリターンとリスクの双方を減少(増加)させる。」 よって、「資本構成の負債比率の上昇は、株主の期待収益のリターンとリスク双方を増加させる。」 H25-15:最適資本構成(資本構成:ベッキングオーダー仮説) H26-15:★MM理論 H27-13:MM理論 H29-17:最適資本構成(MM理論)  
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8.投資決定  設備資産への投資は多額の資金が必要であり、この資金が効率よく配分され、その運用(設備資産への投資)から相当の利益が獲得されなければならない。  そのため、投資を意思決定する前に経済性を評価しなければいけない。投資する以上、投資によって得られる収益が資本コストを上回らなければならない。  経済性の評価はいくつか方法があるが、その方法の多くは、当該投資によって生じる資金の流入と流出を見積り、それが資本コストなどの判断基準で評価される。この資金の流入と流出をキャッシュ・フローと呼んでいる。  さらに、投資を決定するには経済性評価とともに、資金制約による複数投資案からの選択、投資実行中の環境変化への対応などの課題も生じてくる。 (1)貨幣の時間価値と割引キャッシュフロー(DCF) (イ)資金の時間価値 時間の経過とともに資金をふやすことができる。現在の価値に金利分が付加されて将来価値が大きくなる。現在の100万円は1年後に110万円になる(金利10%)。 ※ただし、リスクがないキャッシュフローとする 現在価値=1年後のキャッシュフロー÷(1+金利)=110万円÷1.1=100万円 ※この場合の現在価値は「割引現在価値」ともいう。「1+金利」は割引率。 ※2年後のキャッシュフローの現在価値は割引率が同じなら、現在価値=2年後のキャッシュフロー÷(1+金利)2乗で求められ、単利なら「100万円=121÷1.21」。 将来価値=現在価値×(1+割引率) ※割引率≒金利   (ロ)割引キャッシュフロー(DCF) 「割引く」:将来のお金の価値を現在の価値に戻すこと。 PV = FV ÷ (1+r)n   FV = PV × (1+r)n   FV:将来価値(Future Value) 、PV:現在価値(Present Value)、n:n乗 複利現価係数各年の現価係数を個別に表示:金利(r)10%で1年目の割引率は、1÷(1+r)=0.909、2年目は1÷(1+r)2乗=0.826。計算式は1÷(1+r)n乗 年金現価係数割引率に応じた1年目からの現価係数を累積:金利10%で1年目の割引率は、1÷(1+r)=0.909、2年目は、1年目割引率+{1÷(1+r)2乗}=0.909+0.826=1.735。計算式は{(1+r)n乗−1}÷{r×(1+r)n乗} つまりΣ各年の複利現価係数 = 対応年間の年金現価係数 (1年目の複利現価係数+2年目の複利現価係数=2年間の年金現価係数) 計算例  毎年CFの現在価値の求め方 ’CFが変わるときは、年CF×複利現価係数 で求められる。 年CFが一定のときは、一定CF×相当期間の年金現価係数 で求められる。※平成17年第9問 ※DCF(Discounted Cash Flow)は、割引現在価値に当たり、キャッシュフローの現在価値を求める方法をDCF法と呼ぶ。NPV法とIRR法はDCF法。  
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単利と複利 単利は元本に対して利子が付く、複利は元本に利子が付くとともに利子に対しても翌年から利子が付く。 複利計算と単利計算 複利計算:利息の再運用を含む収益計算  単利計算:利息の運用を含まない収益計算  例:1万円を5%の単利と複利で3年預けると、複利の元本と利子及び合計は 1年後……単利は10,500円、複利は10,000+500=10,500 2年後……単利は11,000円、複利は10,500+525=11,025 3年後……単利は11,500円、複利は11,025+551=11,576 将来価値=現在価値×(1+r)t乗  現在価値=将来価値÷(1+r)t乗 元利合計=元本×(1+i)n乗  i:利子率、n:年数 n年目の元利合計から元本を求める。元本=元利合計÷(1+i)n乗 【過去問H18-13:★単利と複利(利付債を扱う)】   【過去問H16-14:★コスト節減投資の年キャッシュ・フローを求める】 【過去問H18-15:★\念き後年CF、⊆菎愿蟷颪稜CF、CFのリスク】 H27-15:★貸付金の現在価値  
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(2)投資評価基準 (イ)回収期間法 投資額が何年で回収できるか、つまり「将来予想のキャッシュ・フローの総和が初期投資に等しくなるのに必要な期間」。回収期間=設備投資額÷年平均予想CF で求める。 (a)回収期間法……キャッシュ・フローをそのまま使う (b)割引回収期間法……キャッシュ・フローを現在価値になおして使う  (a)と(b)の違い:時間価値を考慮しているか否か。投資判断は、(a)は期間のみ、(b)は投資による収益を考慮。  回収期間法の特徴は、回収期間後のキャッシュ・インフローとキャッシュ・アウトフローを考慮していない(たとえ回収期間後に毎年一定のキャッシュ・インフローがあっても考慮しない)。しかし、算出の容易性、流動性もしくは不確実性の回避を優先すると利用されやすい。ほかの評価法と併用すべき。期間の短い投資案が優先される。   (ロ)会計的投資利益率法 帳簿上の利益と資産簿価を用いて経済性を評価する。 投下資本利益に対する会計的利益(償却後利益)の比率を求める。耐用年数内で各年度に得られる利益を合計し、その合計から平均会計的利益を算定する。算式は、=予想収益(年平均)÷投下資本である。  手順:1分子は会計上の利益=税引き前CF−資金の利息≒営業利益     2分母は当該設備の設備資金+増加運転資本     3各年度の利益率を算出し、期間中の合計を耐用年数(または使用期間)で除して平均収益率を求め基準等と比較する。  特徴:時間価値を考慮していない。あくまで会計上の利益率。   (ハ)正味現在価値(NPV)法 正味現在価値がプラス(または「ゼロ以上」)であれば投資 当該投資によって得られる毎年のキャッシュ・フローの合計の現在価値と、投資額との差額が正味現在価値で、この値が正(プラス)なら投資を選択する方法。 正味現在価値=−投資額+{1年目の年CF+2年目の年CF+……}
 ※ただし、毎年のキャッシュ・フローはそれぞれ現在価値であること。
 手順:1 毎年のインフロー(CIF)、アウトフロー(COF)を求める     2 割引率(r)を設定 ※資本コストを利用     3 CIFおよびCOFを現在価値に割り引く     4 3の現在価値の合計から初期投資額を引く=正味現在価値     5 判断として、現在価値 ≧ 0 ならば投資する 投資評価 相互に排他的な関係で、複数のプロジェクトの優先順位をつける場合、NPVの大きい順にする。 ※試験年のキャッシュ・フローを求める場合、年の税引後利益に減価償却費を加える場合が多い(H18年問15、H16年問14)。 ※試験毎年のキャッシュ・フローが、‘韻験曚両豺腓蓮CF額×年金現価係数で、異なる額の場合は年毎に、CF額×複利現価係数で年CF合計を求める。 【過去問H17-19:★正味現在価値を求める】  
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(ニ)内部収益率(IRR)法 ※内部収益率は企業内で設定した投資の収益率 正味現在価値は、投資により得られる将来のキャッシュ・フロー合計の現在価値から投資額を控除したもの。内部収益率は、正味現在価値=0となる割引率で、資本コスト(機会費用)を超えるかを評価する。 手順:1 毎年のインフロー(CIF)、アウトフロー(COF)を求め、純CFを合計する。    2 正味現在価値が0となる割引率(IRR)を求める(年金現価係数表を利用)。    3 内部収益率と資本コストとを比較し、内部収益率≧資本コスト なら投資する。 特徴 麌充┐任錣りやすい、投資額の規模は考慮していない、正味現在価値法と異なる結論になるときがある。∨菁のキャッシュ・フロー額が異なる場合、マイナスの収益率が算出される場合がある。   (ホ)収益性指数法 毎年のキャッシュ・フローの現在価値の合計を投資額で割って収益性指数を求め、これをもとに投資の意思決定を行うことを収益性指数法という。現在価値指数法ともいう。 収益性指数=毎年のキャッシュ・フローの現在価値の合計÷投資額×100 収益性指数が100%を超えるならば投資案は採択される。 正味現在価値の大小による投資判断だけでは投資効率が判定できないために用いられる方法で、資金制約があり複数の投資案があるとき収益性指数の大きいものから採択される。ただ、収益性指数法を単独で利用して意思決定をする場合は注意を要する。   投資判断の制約 資金制約投資の経済性評価とは別に資金総額の制約、予算枠の制約、他の投資案への影響などの制約がある。 排他的投資ある特定の投資案を選択すれば別の投資案は選択できなくなる場合、排他的投資と呼ぶ。例えば、特定の面積の土地に店舗か駐車場しか建設できないとすれば、店舗を建設する投資案と駐車場を建設する投資案はどちらかしか選べない。 独占的投資案当該投資のみのケースで、他の投資案に影響しないと考える。 投資判断 |碓譽廛蹈献Дトの場合 NPV ≧ 0、内部収益率 > 利子率又は資本コスト、回収期間が短いものが選択される。 ∩蠍瀁啾湘関係の複数プロジェクト NPVの大きい順に優先順位づけする。 M住酸約下(排他的でない複数のプロジェクトがあり、予算制約による組み合わせ選択の場合) NPVの合計値が最大になる組み合わせ。 な数投資案からの選択 内部収益率法と正味現在価値法による経済性評価の誤差 【過去問H19-16:投資評価基準(NPV等と標準偏差)】 H25-17:投資評価基準(投資プロジェクトの評価) H25-18:★投資評価基準(投資プロジェクトの評価) H26-16:★投資評価 H27-16:★投資判断基準(NPV法) H28-17:★[投資評価基準]プロジェクトの評価(IRR) H29-15:★投資評価基準(各期の税引CF)  
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(3)不確実性下の投資決定 シナリオ分析、感度分析 投資に対して、設定した状況が変化した場合の投資評価の結果を事前に分析する手法として、シナリオ分析や感度分析がある。これらは投資評価の精度を高めようとする。 シナリオ分析 得られるキャッシュ・フローに影響する変数に限度を設定し、「最も楽観」「基準・通常」「最も悲観」の3つ以上のシナリオに分けてキャッシュ・フローを計算する。 感度分析 キャッシュ・フローに影響を与える変数の変化に対するキャッシュ・フローを推定して、変数変化と反応する推定値によって最も大きく影響する変数を特定するもの。   リアル・オプション 投資計画または既に開始した投資に対して、状況設定が変化しても投資評価の意思決定を柔軟にしようと手段(オプション)を織り込んだもの。 投資しているプロジェクトの途中で規模を拡大(拡大オプション)したり、縮小あるいは撤退(放棄オプション)したり、延期(延期オプション)して投資評価する選択肢。不確実性の高い投資プロジェクトの投資判断に使われている。 具体的には、初年度に投資を実行し、翌年度以降は環境に合わせて投資内容を変更していく投資判断の手法。 ※直訳的には、実物投資の選択肢。オプション(取引)による金融資産でなく、固定資産などの実物資産へのオプション適用といわれているようだ。 H28-11:[不確実性下の投資決定]投資家のリスク感   年CFの不確実性 投資判断の段階で算定する「予想される年CF」は投資判断上重要な役割を果たすが、不確実性が高く何らかの算定基準が必要になる。投資判断では年CFのリスクをどのように見積るかが求められる。   投資対象 固定資産である設備への投資以外に、在庫投資、研究開発投資、環境・省エネ投資など投資の対象は広いが、現在のところ試験では設備投資への出題が大勢である。   その他の手法 差額原価収益分析……差額利益が大きい代替案を選択する手法 差額利益=(代替案Aの収益−代替案Bの収益)−(代替案Aの原価−代替案Bの原価)     =差額収益−差額原価   H27-17:★予想収益率 H29-16:★不確実性下の投資決定(期待売上高)  
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9証券投資論 (1)ポートフォリオ理論 証券投資では一つの証券に投資するよりも複数の証券を組み合わせて分散投資するほうが投資収益率の最大化が図れる。特に不確実性などの性質が逆のもの同士を組み合わすと変動リスクは低減できる。これを説明するのがポートフォリオ理論。ポートフォリオ・セレクションとか資産選択の理論ともいう。 ※以下は株式投資を想定する(投資収益率は、配当利回りと株価上昇(下落)率を加えたもの) ポートフォリオ理論 有価証券に投資するとき、予想投資収益率(以下、予想収益率という)の分布から得られる期待値標準偏差の2つのパラメータを用いて、効用の最大化(投資収益率の最大化)を求める有価証券組み合わせ選択の理論。※予想収益率の分布は正規分布を前提としている。   ◆ポートフォリオに至る考え方 右図  ある証券への投資によって得られる予想収益率の分布は、右図のように経済環境の変化によって分布する(正規分布になるとする)。 証券によっては期待値の変化範囲が広いかもしれないし、逆に範囲が狭いかもしれない。また期待収益率(平均に相当)も同じとは限らない。   証券投資では 4証券への投資図 仮に、4つの証券があるとする。それぞれの予想収益率の分布は右図のように表される。 aとbは期待値は同じだが、bの方がバラツキが大きい。したがってaを選ぶ。(bは損失の可能性がaより高くなる) cとdも期待値が同じだが、dの方がバラツキが大きい。したがってcを選ぶ。    では、aとcではどちらを選ぶか。 結果は同じバラツキなら期待値の大きい方を選択するのでcが選ばれる。 aとdではどうだろうか。 この場合は選択する者の選択特性で分かれる。リスクより期待値(リターン)を優先するならdを、リスクを避けたいならaを選ぶ。  
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(イ)ポートフォリオのリスクとリターン 証券投資のリスクとリターン リスク 期待した結果にならない確率が存在する状況(それぞれの結果が発生する確率がわかる)で、経済環境等による証券市場全体の変動リスクに、投資する株式の企業個別の不確実なリスクが加わる。※前者のリスクを低減しようとするなら証券投資以外の債権や金融商品等の資産を選択しなければいけない。 ポートフォリオでの投資案のリスクは予想収益率の分散または標準偏差 一般的に、リスクが小さくリターンが大きい投資案を選ぶが、「リスクに対するリターンの相対的な大きさ」を測定し、その値が大きいものを選ぶ。 リターン ファイナンスでは「投資に対する対価」といわれ、ポートフォリオの投資案でのリターンは投資収益率(平均値)。 リターンにおける意思決定対象は、収益率、投資額、リターンの発生確率 ー益率のみの判断 ⊆益率と投資額の判断≒得られる収益額の大きさ 収益率と発生確率を判断……得られる収益率がいくつか有り、それぞれ発生確率をもつ Aの平均収益率=(a1の収益率×a1の発生確率)+(a2の収益率×a2の発生確率) 証券投資では、投資収益率の予想の不確実性や投資家の選択特性がともなう。そこで、証券を組み合わせて投資すると、予想収益率の分布から得られる期待値と標準偏差は曲線(双曲線)を描く。ここで、期待値をリターン、標準偏差をリスクとしよう。 図9-1 描かれた曲線はリスクが高くリターンが低い部分も含まれるが、危険回避型の投資家にはリスクが最も低くて最もリターンが高い点と、リスクは高いがリターンが最も高い点を結ぶ曲線部分が投資対象になる。この曲線部分を効率的フロンティアと呼び、曲線上のポートフォリオを効率的ポートフォリオと呼んでいる。
 図9-1の曲線aeは効率的フロンティアに当たり、それぞれの投資割合によって曲線の形状も異なる。同じ対象の複数証券の相関関係をつかみ、期待する投資収益率を可能にするように投資割合を組合せることができる。
ポートフォリオ理論はこのように、投資を選択する対象を曲線で表すことを可能にしている。 ポートフォリオ・セレクションの理論  
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(ロ)効率的ポートフォリオから最適ポートフォリオの選択 図9-2 最終的には、危険回避型の投資家は自分の効用曲線と効率的フロンティアが接する点(点F)のポートフォリオ(最適ポートフォリオ)を選択するといわれている。 効率的ポートフォリオの求め方   図9-3 さらに、投資の対象を証券のみならず安全資産といわれるリスクがゼロの証券(国債等)に広げると、リスクフリーの期待値が追加された効率的ポートフォリオに変化する。 リスクフリーの点(RF)と効率的フロンティアのM点との線は「資本市場線」と呼ばれる。 リバランス相場変動などで投資配分の比率を調整すること。 シャープレシオ(シャープ測度)単位リスク当たりのリターンが最も大きい組み合わせは、シャープレシオが最も大きい。 シャープレシオ   =(ポートフォリオの期待リターン − 無リスク資産のリターン)÷ポートフォリオのリスク シャープレシオは無リスク資産のリターン(点RF)から引いた線が曲線に接するところの傾き(角度に当たる)。 つまり、無リスク資産を導入した場合の効率的フロンティア 三様のリスク特性>  組み合わせると効率的>  <ポートフォリオの具体例   【過去問H17-13:★CAPMと市場ポートフォリオ】 その他の投資法 ドルコスト法一定額を、定期的に、一定の証券に長期にわたり投資する方法。(宝くじの購入方法に似る)   H26-17:安全資産とリスク資産 H27-19:ポートフォリオ理論 H28-15:★[ポートフォリオ理論]設問1:予想収益率の共分散と相関係数、設問2:投資判断 H28-18:[ポートフォリオ理論]無リスク資産が存在しない(設問1)、存在する(設問2) H29-19:ポートフォリオ理論 H29-23:ポートフォリオ理論(最適ポートフォリオ)  
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(2)資本市場理論 (イ)資本資産評価モデル(CAPM)の理論 CAPM=Rf+β(RM−Rf) Rf:リスクフリーのレート、β:対象資産のリスク、RM:マーケットのレート リスクを伴う資産の予想される期待収益率は、リスクのない利子率とリスクプレミアムを加えたものに等しい。リスクプレミアムは、市場ポートフォリオとリスクのない利子率との差にβ値を乗じたもの。証券投資に限定すれば、βは株式市場のリターンの変化に対する対象株式のリターンの変化で表す(対象株式と市場リターンの共分散÷市場の分散)。株式市場のβ値は本来予想することによる確率変数だが、近似として過去の収益率の実績を元に推計したものを使用している。※β値は過去60カ月間のものが多く、業種別などに分けられている。 H28-12:★[資本資産評価モデル]設問1:モデル、設問2:期待収益率   (ロ)指数モデル ある値について、時系列の統計値を、一定時点の値を100として相対的に表したものを指数(Index)という。 株式市場全体の動きを表すものに株価指数があり、「TOPIX」(東証株価指数:東京証券取引所の1部株価を加重平均したもの)や「日経平均株価指数」(225銘柄の株価を合成したもの)などが代表される。長期投資を行う場合は株価指数も参考にして行う。 東証株価指数毎日の全上場株の時価総額を基準日の時価総額で除して算出する。基準日は昭和43(1968)年1月4日で、この日の時価総額を100として算出する。新規上場や増資などによる上場株数の変動には修正が加えられている。総合株価指数はどうしても大型株の影響を受けやすいので、資本金規模別株価指数も注目したい。   (ハ)CAPMと財務決定 資本市場の一般均衡理論として、 特定株式のレート − リスクフリーのレート=β×(マーケットのレート − リスクフリーのレート) が成り立つことが証明されている。 CAPMは、CAPM=Rf+β(RM−Rf)として資本コストとされるが、これは投資家が当該企業(当該株式)に求める期待収益率に相当する。 財務決定を企業価値の最大化とするなら、資本コストは株価を引き下げないために最低限求められる収益率と考えられる。 例えば、「自己資本比率が低下するとβ係数が上昇する」といわれるように、財務決定ではCAPMは重要な意味をもつ。 さらに、CAPMにより企業価値を算出することができる。リスクを含む将来価値をもつ資産の現在価値は、将来価値の期待値からリスクプレミアムを除いたものを「1+安全利子率」で除して導くことができる。つまり、企業価値=(期待将来価値−リスクプレミアム)÷(1+安全利子率)とされる。 ※ CAPM(Capital Asset Pricing Model)   ※株価の評価……―稷益の何倍か(PER、平均16倍?)、⊇禹饂困裡映椣幣紊(PBR)、G枦と株価(配当利回り、長期債の利回りと比較)   【過去問H19-14:★資本市場理論(CAPMによる期待収益率)】 H26-18:★資本市場理論(β値) H27-18:資本市場理論(資本資産モデル) H29-20:★資本市場理論(CAPM理論)  
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10 企業価値 企業価値は、目的・用途によって算定方法が異なる。また、株式を上場している企業と非上場の企業では情報の制約が伴う。 (1) 株価の算定 (イ)配当割引モデル 配当による株式価格への効果を考慮したもので、「現在の株式価格は将来の配当流列を割り引いた値になる」とする考え方。 現在の株価をP0、予想される配当額をD、割引率をkとすると、「P0=D÷k」、一定の成長が見込まれるなら、「P0=D÷(k−g)」(gは成長率で、g<kのこと)。 ※一定成長とは、配当率が年々成長するとしている。   配当割引モデルの考え方 企業の時価総額=Σ{毎年の配当額÷(1+割引率)} が成立する。 成立の制約条件  \念き後利益+増資額=投資支出+配当額 が成立すること。 ◆‥蟷饂拿个肋来の利益(税引き後利益)を定める。 つまり、「税引き後利益−投資支出=配当額−増資額」となり、配当から増資を除いた純配当額が確定しているために、配当は企業価値に影響を与えない。 <具体例> ある企業の株式に投資した場合の収益率は、 r1={(d1+P1)÷P0}−1 d1:ある期の1株あたりの配当額、P1:配当後の株価、P0:現在の株価 数式を変形 P0=(d1+P1)÷(1+r1) ……「1期間後の配当と株式価値が現在の株価を定める」。したがって、1期間後の株価は P1=(d2+P2)÷(1+r2) これを繰り返せば、P0=Σ(dt÷(1+r1))t乗 仮に毎期の割引率を一定とすれば、現在の株価は P0=Σ(dt÷(1+r)t乗) さらに、毎期の配当が同じとすれば P0=D÷r さらに、将来の配当が現在の配当d0から一定率gで成長するとすると、P0=d0÷(r−g) ただし、r > g のこと。   定率成長配当割引モデル 将来にわたって一定の成長率で配当が増加するとした場合の現在価値を求める方法 ※多段階(2〜3段階)の成長で見る場合もある。 【過去問H16-10:★配当割引モデル】 H28-16:★[株価の算定]配当割引モデル H29-18:★株価の算定(理論株価)  
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(ロ)株価収益率 現在の株価が利益の何倍で取引されているかを測定したもの。業種等により傾向が見られる。 株価収益率(PER)=株価÷1株当たり利益   (ハ)株価純資産倍率 現在の株価が帳簿価値(帳簿上の純資産)の何倍で取引されているかを測定したもの。 株価純資産倍率(PBR)=株式時価総額÷純資産=発行済み株式数×株価÷純資産 帳簿価値でなく時価でみる場合は、「Qレシオ」を使う。 ※ Qレシオ=株式時価総額 ÷(時価の資産総額 − 時価の負債総額)   (ニ)株価キャッシュフロー倍率 株価がキャッシュフローの何倍にあるかを示す。 株価キャッシュ・フロー倍率=株価÷1株あたりCF ※CFは、純利益+減価償却費、または、純利益+減価償却費−配当金 を使う ※ 株価キャッシュフロー倍率のCFは減価償却費を加えるが、株価収益率の減価償却費は加えない、ことに留意。 株式指標   【過去問H19-12:★株価の算定】 H21-20:★企業評価(市場株価比較:PERとPBRの算出) H21-14:企業価値(株価算定:株式分割) H25-20:★株価の算定(自己資本配当率DOE,PER) H26-19:★理論株価(CAPM)   (2) 企業価値評価モデル (イ)割引超過利益モデル 将来得られる利益から投資額を控除した利益(超過利益)を一定の割引率で現在価値にして評価する方法といわれている。   (ロ)割引キャッシュフローモデル 将来生じるであろうキャッシュ・フローを、一定の割引率で現在価値におき直して現在の株価と比較する方法。 配当割引モデルに似ているが、より予測精度が高いといわれている。企業価値=Σ{t期キャッシュ・フロー÷(1+r)t乗} ※キャッシュ・フローは純利益+減価償却費 H25-21:企業価値評価モデル(資本市場のベータ値) H26-20:★企業価値  
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(3) 企業合併・買収における企業評価 (イ)収益還元方式 企業価値を収益還元価値とする考え方で、絶対評価方法。予想収益又は予想配当を還元率で還元する。「過去数年間の平均利益を稼いだのに必要な資本の価額を資本還元率で還元する方法」ともいわれる。 ○予想収益の場合 過去の総利益から将来の純利益を見積り、それを還元率で資本還元する方法。赤字企業は適用できない。 企業価値={(営業利益+減価償却費−法人税)÷割引率}−有利子負債、とする。※「営業利益+減価償却費−法人税」は税・金利・利払前CF。割引率は期待利回り。 ※収益を将来FCFに、還元率を加重平均資本コスト(またはCAPM)にする場合もみられる。 ○予想配当の場合 毎年一定の配当があるとする場合(ゼロ成長配当割引モデル)と、利益の一部を内部留保して将来の利益の成長可能性を持たせることで将来の配当の成長性も含めて評価する場合(一定成長配当割引モデル)がある。 非上場会社の株価算定に注意! 「市場で株を売買できないことを理由に株価を低く見積ることはできない。」「収益還元法では認められない。」最高裁決定H27年3月26日。   DCF法……将来にわたって生み出すCFを資本コストなどで割り引く 基本形:V0=CF1÷(r-g)n乗V0:企業価値、CF1:1期におけるCF、r:資本コスト、g:CFの成長率 (「r」はリスクや資金調達がミックスされている) 〇埔豌礎佑蓮⊂来FCFをWACCで現在価値にして総額から負債の現在価値を控除する 市場価値=FCF1÷WACC−負債の現在価値 または FCF1÷(WACC-g)−負債の現在価値 配当割引モデル(Dividend Discount Model:DDM) (a)ゼロ成長配当割引モデル(DDM) 理論株価=D1÷r D1:今期配当  これより時価総額算出 (b)一定成長配当割引モデル   理論株価=D1÷(r-g)  ※CFを純CF(NCF)=事業からのCinF−投資等のCoutF=税引後営業利益+減価償却費−(運転資本増減+設備投資額)とする場合もある。  ※資本コストはCAPMが使われる場合が多い。 ※この後、事業価値に余剰現預金を加えて企業価値とし、さらに有利子負債や少数株主持分を除いて株主価値を導く。   (ロ)純資産方式 総資産から負債を除いた純資産が企業価値であるとする方式。簿価によるか時価で行うかで大きく異なり、のれん等の評価が含まれていないことから単独で評価に使用されることは少ない。 帳簿価格方式貸借対照表より、解散価値である純資産を企業価値とする。 再調達時価方式総資産を時価に再評価して評価後の純資産(=総資産−負債)を求める。 ※解散(清算)価値=資産処分価値 − 負債金額  
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(ハ)市場株価比較方式 市場株価を基に、時価総額は純資産の市場価値に相当すると考えるが、非上場企業には使えない。 市場株価法……特定期間の株価等を基に企業価値を算出する。 時価総額……時価総額=株価×発行済み株式数 株価収益率……株価収益率=時価総額÷予想税引後利益 又は株価÷1株当たり利益 株価純資産倍率……株価純資産倍率=株式時価総額÷純資産 又は株価÷1株当たり純資産 類似会社比較法 評価する企業の業種と類似の業種を選んで、その業種の上場企業の株価、一株当たり配当額、利益額、純資産額(簿価)等を比較して株価を推定する(類似業種比準方式)。「類似会社比準法」「マーケットアプローチ」「株価倍率法」も相当のものと考えられる。   その他の企業価値 ROEを企業価値とする ROE(自己資本当期純利益率)=当期純利益÷自己資本×100  =当期純利益÷当期売上高×当期売上高÷総資産(簿価)×総資産(簿価)÷自己資本  =ROA(総資産純利益率)×財務レバレッジ トービンのqを企業価値とする トービンのq=(時価の負債総額+株式時価総額)÷時価の資産総額 q > 1 ……資産の時価以上の価値 q < 1 ……〇饂困鰺効に活用していない        株価は過小評価している(理論価格より資産価格が高い)……買収標的の恐れ Qレシオを企業価値とする Qレシオ  株式の時価総額が時価の純資産に対してどれくらいか =株式時価総額÷(時価の資産総額−時価の負債総額) 【過去問H17-12:★各種企業価値評価】 ◆整理 資本コスト最低限必要な投資利益率で、資金の時間価値を考える場合は「割引率」に、投資の経済性評価を考えるときはハードルレート(棄却率)に使われる。 ※ハードルレート……株主が期待してるリターンで、期待収益率(株式ですべて資金調達しようとした場合のコスト)である。 資本コストの概念に必要なもの 埋没原価(サンク・コスト)……手付金など 機会コスト投資機会の利益率(複数の投資機会があるが、)で、資本コストは投資家の機会コストと考えると、株主資本の資本コストは株主の機会コスト(CAPMなどで算出)に相当。 WACC加重平均資本コストは、負債コストと株主資本コストを加重平均したもの。 CAPM株式に期待される投資利益率は、リスクフリー・レート+リスク・プレミアム β値個々の株式のリスク・プレミアムを株式市場全体のリスク・プレミアムで割ったもの。株式市場全体のβ倍のリスク・プレミアムがある。 例:国債の利率2%、株式市場全体のリスク・プレミアム6%、企業Aの株式のリスク・プレミアム8%、企業Bの株式のリスク・プレミアム10%のとき、 企業Aのβ=(8−2)÷(6−2)=1.5、企業Bのβ=(10−2)÷(6−2)=2 β値は、株式市場全体の収益率の変動1%につき、個々の企業の株価収益率が何%変動するかを示す数値でもある。 H28-13:[企業合併・買収における企業評価]企業買収略語  
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11 デリバティブとリスク管理 (1)リスクの種類 リスクの種類 ※リスクには、プラスに影響する場合とマイナスに影響する場合があるが、ここではマイナスに影響する場合を考える。 金融リスク 金利リスク……資金の借入や貸し出しにおける金利の変動による損失 為替リスク……為替相場の変動による損失 株価リスク……株価の変動による損失 金融以外のリスク例 信用リスクデフォルトリスクともいう。償還期日に額面を回収できない危険性。 流動性リスク資金調達が容易にできるか。例えば、証券を保有する投資家がその証券の満期前に妥当な価格で売却できない危険性 リスクが予想される例 商品を輸入して国内で販売する流通業者(輸入業者とする)を考える。仕入先は米国にあり、ドル建で仕入れ、支払いは1ヵ月後とする。 仮に、ある日、,000の仕入をしたとして、そのとき1ドルが100円であれば仕入額は2,000,000円になる。しかし、為替相場はドル高傾向にあり、1ヵ月後の支払日に1ドルが105円になれば支払額は2,100,000円になってしまう。(為替リスクである。)そのため、輸入業者は「支払額を確定する」ために為替リスクの回避策を講じた。 リスクの回避策 不確実性に対するリスク移転(リスク移転:リスクを減らすこと) ヘッジング将来価値を固定化する。為替予約などがあるが利益を得るチャンスはない。 インシュアリング将来リスクに保険をかける。オプションなど。プレミアム(対価)を支払うことでリスクを回避でき、利益を得るチャンスもある。 分散化分散投資、ポートフォリオなど。 回避策の具体例:為替リスクの場合 (a)変動性を減少……先物為替予約 (b)不利な結果が発生する可能性を減少……通貨オプション 具対策 \菠為替の予約する将来のある時点で相手国の通貨を一定の価格で売買する。 ∈銚△蛤通海鯤申牴相手国通貨で債権と債務を保有してリスクを回避する。例えば相手国に売掛債権があれば、相手国の銀行から同額を借り入れる。 1澤てで契約する 取引を円建で行なう。 せ拱Т日を変更する為替変動が激しい場合、商品の受け取りと支払いをより近づけることで変動を回避する。 H29-22:リスクの種類(流動性) H25-22:リスクの種類(為替リスクヘッジ)  
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(2)オプション取引 オプション  特定の資産を、特定の一定期日または期間中に、あらかじめ定められた相場で売買する権利で、買うことのできる権利または売ることのできる権利を所有者に与える契約。買うことのできる権利をコールオプション、売ることのできる権利をプットオプションという。  特定の一定期日を満期日、あらかじめ定められた相場を権利行使価格という。満期日に権利行使できるヨーロピアン・オプションと、満期日までなら権利行使できるアメリカン・オプションがある。 (イ)コールオプション 上昇相場で活用しやすい  買うことのできる権利を付与するオプション取引で、コールを発行する(権利を付与する)投資家は売り手、コールを購入する投資家は買い手となる。  買い手は、満期日または満期日までに権利の行使・不行使を選択できる。したがって、権利行使時に損失が見込まれれば権利を放棄できる。このときはオプション料のみの損失が生じる。当然、行使して利益を獲得できる。利益の上限はない。  売り手は、コールの買い手に権利を付与する代償としてオプション料(オプション・プレミアム、オプション価格ともいう)を受け取る。利益の上限はオプション料で、損失は下限がない。   (ロ)プットオプション 低迷相場で活用しやすい  売ることのできる権利を付与するオプション取引で、プットを発行する(権利を付与する)投資家は売り手、プットを購入する投資家は買い手となる。  買い手は、満期日または満期日までに権利の行使・不行使を選択できる。したがって、権利行使時に損失が見込まれれば権利を放棄できる。このときはオプション料のみの損失が生じる。当然、行使して利益を獲得できる。利益の上限はない。  売り手は、プットの買い手に権利を付与する代償としてオプション料を受け取る。利益の上限はオプション料で、損失は下限がない。   売り手と買い手の損益の推移 買い手:権利行使の実施・放棄を選択可、最大損失はオプション料のみ 売り手:買い手の要求に応じる義務有り、最大利益はオプション料 オプションによる損益(過去問H18-12活用)   【過去問H18-12:★プット・オプションと現物株との損益】 【過去問H19-15:★プットオプション(ヨーロピアン)】 H25-23:オプション取引(オプション戦略の損益) H26-22:オプション取引 H29-25:オプション取引  
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(3)先物取引 先物取引将来の特定の日に、何を、どれだけ、いくらで売買するかという契約を現在しておき、特定の日以前に反対売買をするか、特定の日に契約を履行するかの、いずれかによって決済する取引を言う。 先物は現物からの派生した商品(証券)で、いくらに相当するものが先物価格、市場があれば先物市場で取引を行う。 先物を利用する取引形態…….悒奪献鵐亜淵螢好回避)、∈枋蝓文淑と先物の取引)、E蟲 ※先渡しと先物………将来の時点の取引について事前に価格などを決めておくのが先渡し取引で、先渡し取引に特定の受渡日を決めて取引するのが先物取引といわれる。 (イ)先物為替予約 将来の一定期日に一定の価格で外貨を売買する契約を行う   (ロ)通貨先物取引 通貨を取引対象とする先物取引。 価格変動リスクを回避するリスク・ヘッジを目的とする。 先渡取引将来の特定の日に当初合意した価格で売買することを約し、現在売買契約を締結する。相対取引で行われる。反対売買の決済ができるようにしたものを先物取引という。 先物市場取引所を通じた市場での取引。 H29-21:先物取引(先渡取引・先物取引)   (4)スワップ 債務条件等を交換することでより優位な取引を実現しようとする。例えば、外国為替取引で直物為替と先物為替を同時に同額行なうこと。例えば直物を売ると同時に先物を同額買うなどの交差取引。 (イ)金利スワップ 調達資金や運用資金の金利条件を交換する取引。同種通貨で異種金利を交換する。調達金利と運用金利にギャップが生じている場合に利用される。 例:固定金利債市場でたくさん発行している会社Aが追加的に固定金利で資金調達をする場合、会社Aは変動金利による資金調達をし、会社Aより低い調達コストで固定金利による調達ができる会社Bと債務を交換して両社の調達コストを引き下げる。一般に、固定金利と変動金利、または変動金利同士で行なわれる。   (ロ)通貨スワップ 調達資金の建値通貨に関する条件を交換する取引。同種金利で異種通貨の交換を行うこと。調達通貨と運用通貨の違いから生じる為替リスクを回避するために利用される。 例:ドル市場で優良企業とされる会社Aがスイスフラン建資金を必要とし、スイスフラン市場で優良とされる会社Bがドル建資金を必要とする場合、各市場で優良とされる両会社がそれぞれの市場で資金調達をして、会社Aと会社Bが債務条件を交換したほうが個別に資金調達するよりコストが低い。このとき通貨スワップ取引が行なわれる。 他に、金利スワップと通貨スワップを組み合わせたものや、対象を資産に広げて債券や貸し出しの金利を別の金利または通貨と交換するアセットスワップなどがある。 H26-21:システマティック・リスク  
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12 その他財務・会計に関する事項 ファイナンスと心理学 人は、自分の利益になる確実性を求め(リスクを避けようとし)、損失を被る確実性を避けたがる(リスクを受入れやすい)。 個人の証券投資の場合、株価が上昇していると、(もう下がるのではと考え)すぐにその株を売って利益を確保する。反対に、株価が購入時より下がっていると(前のように上がるのではと考え)、なかなかすぐに売らない。つまり売って損失を明らかにしない。 上の2つはマーケット分析に心理学を取りいれたものといわれ、「行動ファイナンス」あるいは「行動経済学」などで聞かれるもの。よって、「利食いはゆっくり、損切りは早く」である。   【過去問H19-11:買収防衛策】 H26-14:効率的市場仮説   【用語】 債券投資・証券投資 割引債保有していても利子を得ることはできないが、満期が来ればあらかじめ決められた価格(額面価格または償還価格)で買い戻される。市場での売買は額面価格より低い価格で取引される。市場価格が決まると割引債の金利も固定する。金利は「i=額面価格÷市場価格 − 1」で表される。ここで、市場価格が上昇すると額面価格は一定だから「額面価格÷市場価格」は1より大きいので値は小さくなり、iは低下する。つまり、「価格の上昇で金利が下がる」など価格と金利は逆の動き。 利付債満期まで利付債の利子を受け取ることができ、満期日に額面価格で償還される。通常の国債が代表的商品で、債券市場で活発に取引される。市場価格が決まれば金利も確定する(割引債と同じ)。 インカムゲイン現金配当や受取利子 キャピタルゲイン資産の価格変動による利益。資産の価格変動による損失は、キャピタルロス クーポン利息支払のための利札(りさつ)。債券では利払日ごとに利札があり、切り離して利払いを受ける。債券の表面金利を「クーポン・レート」と呼び、額面に対する年率で示す。 償還差益債権を額面金額と比べて安い(高い)価額で取得すると、償還時の価格はパー(額面)なので差額が利益(損失)となる。この差額のこと。 レーティングリサーチに基づいたアナリストの投資判断。例えば、レーティング1:今後6カ月間のパフォーマンスがTOPIXを15%超上回ると予想。レーティング5は同下回ると予想。 その他 公募と私募50名が境界 先渡レートフォワードレートとも言う。将来の2つ以上の時点間に適用される金利。4つの時点なら6通りできる。レートは、フォワードレートとスポットレートの2種のみ サスティナブル成長率EPSの成長率を予測するときに用いる指標。ROE×内部留保率で求める。内部留保と収益性を基に成長率を予測する。  
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参考図書 財務会計 斎藤静樹編著 有斐閣 2002 入門経営財務 亀川雅人著 新世社 2002 経営管理会計の基礎知識 山田庫平編著 東京経済情報出版社 2002 企業価値入門 渡辺康夫・松村広志著 東洋経済新報社 2001 外国為替の知識 国際通貨研究所編 日経文庫 2007 企業結合会計の知識 関根愛子著 日経文庫 2006 金融入門 岩田規久男 東洋経済新報社 2008 証券投資の基礎 野村證券投資情報部編 丸善 2002 企業財務 仁科一彦著 日経文庫 2002 会計学大辞典 安藤英義他編集 中央経済社 2007 日本経済新聞 中小企業診断士試験問題 平成13年〜29年 中小企業診断協会  他 学習ノート