経済学・経済政策:ミクロ経済学他の学習ノート表紙

    ミクロ経済学の学習ノート

             −目 次−  凡例:[page]

6.市場メカニズム …………………………………………………………………………………………1
(1) 需要・供給・弾力性の概念[1]
(2) 市場均衡・不均衡[3]
(3) 競争的市場の資源配分機能[4]
(4) 「市場の失敗」と外部性[6]
(5) 公共財と政府規制[8]

7.市場と組織の経済学 ……………………………………………………………………………………9
(1) 取引費用概念[9]
(2) プリンシパル・エージェント概念[10]
(3) 情報の不完全性[10]
(4) ゲームの理論[11]

8.消費者行動と需要曲線 …………………………………………………………………………………13
(1) 効用理論[13]
(2) 予算制約と消費者の選択行動[14]
(3) 代替効果と所得効果[15]

9.企業行動と供給曲線 ……………………………………………………………………………………17
(1) 利潤最大化仮説[18]
(2) 生産関数と限界生産性[19]
(3) 費用曲線とサンクコスト[21]
(4) 収穫逓増・逓減[22]
(5) 規模の経済性・範囲の経済性[22]

10.産業組織と競争促進 ……………………………………………………………………………………22
(1) 市場構造と競争モデル[22]
(2) 独占の弊害と寡占下の協調行動[24]
(3) 製品差別化と独占的競争[26]
(4) 参入障壁と市場成果[28]
(5) 研究開発と技術革新[29]
(6) 事業活動の国際化と通商政策[29]
(7) 中小企業と産業政策[30]
(8) 規制緩和と民営化[31]

11.その他(ミクロ経済学) …………………………………………………………………………………31

参考図書
リンクの参考資料 p1〜p2
*** 共通的な事項 *** 完全競争市場の4条件有形財と無形財(サービス)を合わせて財とする。<一物一価 ―淑に多くの売り手と買い手が存在し、価格受容者である。 品質が均一で、標準化された汎用品の財である。 財の価格と品質の情報を誰もが入手できる。 せ夏・退出が完全に自由である。 需要関係の用語 効用……消費者が財を購入するのは満足(効用という)を得るため 正常財……所得が増加すれば、需要が増加する財 下級財……所得が増加すれば、需要が減少する財 代替財……他の財の価格が上昇すれば、この財の需要が増加するとき、互いに代替財という 補完財……他の財の価格が上昇すれば、この財の需要が減少するとき、互いに補完財という 限界概念(限界収入と限界費用) 限界収入……もう1単位生産することで増加する収入の増分 限界費用……もう1単位生産することで増加する費用の増分 利潤限界収入が限界費用を上回るなら、もう1単位生産することで利潤は増加する。よって、利潤が最大になるのは「限界収入=限界費用」のときで、これ以上なら、限界収入<限界費用 になる。 限界効用もう1単位(消費を)増加することで得られる消費者の効用の増分。つまり「限界効用=予算」のときが効用最大点(それ以上だと予算費用がまさる)。   6.市場メカニズム 市場メカニズムは「需要量と供給量に乖離があるときに、価格がその差をなくす方向で動いていくとする市場の調整機能」としている。 想定する市場 想定する市場は完全競争市場で、誰も価格を勝手に決められないほど多くの売り手と買い手が参加している。また、取引される財・サービスはどれも区別しにくく、品質や価格の情報は知れ渡っている。このような市場を想定する。  この市場では、売り手と買い手が(与えられた)そのときの価格で取引を行う。それゆえ、取引が成立するのは買い手と売り手の価格が一致する場合になる。   (1) 需要・供給・弾力性の概念 需要と供給 市場には個人・家計からなる買い手と、企業からなる売り手が多数いる。この市場では、財の価格は(需要と供給によって)外生的に決まり、与えられた価格によって売り手と買い手の行動が左右される。買い手は、各自の消費による効用を最大化するように財・サービスの消費量を決定する。これが需要である。他方売り手は、企業の利潤を最大化するように財・サービスの生産量を決定し、生産する。これが供給である。<8項:消費者の行動> <9項:企業の行動> 需要と供給の軌跡 需要曲線(総括的に)財の価格が与えられたとき消費者がどれだけの量を購入するかを示すもの。消費者の所得の変化と他の財の価格の変化によって、需要曲線は変化する。※このノートではDとして示す。 供給曲線(総括的に)価格の変化に応じた企業の供給量を示すもので、その時の価格で利潤を考え、生産量を変化させる。※このノートではSとして示す。  
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弾力性 需要と供給の相互の影響や価格変化による需要の変化、あるいは所得の変化による需要の変化について「弾力性」を用いて表す。 価格の変化に応じて需要量がどのくらい変化するかを示すものを需要の価格弾力性という。一般には、その財の価格が上昇すると需要は減少する。 所得の変化に応じて需要量がどのくらい変化するかを示すものを需要の所得弾力性という。一般には、所得が上昇するとその財の需要は増加する。 需要の価格弾力性その財の価格の変化と需要量の変化を示すもので、価格が1%上昇したときに、財の需要がどれだけ増減するかを示す。仮に、財の需要が0.5%減少するなら弾力性は正の0.5になる(もし、需要が増加するなら負となる)。弾力性が1より大きいとき、「弾力性ある」という。 ※弾力性:需要の価格弾力性を例に 変化前の価格をP'、変化後の価格をP"、価格の変化量をP、変化前の需要をQ'、変化後の需要をQ"、需要の変化量をQ、需要の価格弾力性をeとすると、e=−(Q/Q)÷(P/P)=−Q/P×P/Q  *ここで、P=P"−P'、Q=Q"−Q' 需要の所得弾力性所得の変化と需要量の変化を示す。所得が1%上昇したときに、財の需要がどれだけ増減するかを示す。仮に、0.5%増加するなら弾力性は0.5になる。弾力性が正ならその財は正常財、負ならば下級財という。   所得変化と財の需要 上級財(正常財)……所得の増加とともに需要量が増加する財。奢侈品や必需品。 奢侈品(しゃし品)……所得が増えるとその財への支出が増加する(所得弾力的:弾力性1以上) 必需品……所得が増えるとその財への支出は増えるが、需要の割合は減少する(所得非弾力的:1>弾力性>0) 中級財(中立財)……所得が増えても需要量は変わらない(必需品:非弾力的、弾力性=0)。 下級財(劣等財)……所得が増加すると需要量は減少する。(弾力性<0) ギッフェン財……価格が下落すると需要量は減少する(マイナスになる所得効果の絶対値が代替効果の絶対値より大きいため、価格効果がマイナスになる)  ※パンの高騰にもかかわらず、他の代替品が高いので代替品の消費を抑え、パンの消費を増やした(19世紀アイルランド、ギッフェンの逆説) 連関財2財の需要量が互いに相手の価格に応じて変化する。このときの弾力性を「需要の交差弾力性」という。代替財があると弾力性は大きくなる。粗代替財(弾力性>0)と粗補完財(弾力性<0)がある。 2財(x,y)の関係:価格変化と需要変化 代替財……x財の価格が上昇するとy財の需要量が増加する。y財はx財の代替財(粗代替財)。弾力性の値が大きいと密接な代替関係があるといえる。 補完財……相互に補完して役割を果たすので、x財の価格が上昇するとy財の需要量が減少する。y財はx財の補完財(粗補完財) 独立財……x財の価格が上昇したときy財の需要は変化しない。 需要の交差価格弾力性2つの財で、一方の財の価格が1%の上昇したとき、他方の財の需要量が何%変化するか。 ※需要曲線と価格弾力性は、需要曲線上では上に行くほど弾力性が大きい。需要曲線の傾きが大きいほど弾力性は小さい。 H25-15:需要・供給・弾力性の概念(需要曲線) H27-12:需要・供給・弾力性の概念(完全補完財) H28-12:[需要・供給・弾力性の概念]医療に見る価格と需要の変化を考える H28-13:[需要・供給・弾力性の概念]農産物に見る需要と供給 H29-13:需要・供給・弾力性の概念(需要の価格弾力性)  
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(2) 市場均衡・不均衡 メロン取引の均衡 市場均衡図  メロンの価格がP1円のとき、需要<供給なら、売れ残りをかかえた売り手は価格を下げて売り切ってしまおうとする。そうすると市場の価格は低下し、需要量は増え(安いのなら買う、右下がりのため)、供給量は減る(その価格では採算の合わない売り手が出るから)。  逆に、価格がP2円のとき、需要>供給とすると、メロンを買えない買い手がいるので、P2円にα円を上乗せしてでも買いたい人が出てくる。そうすると、価格は上昇する。つまり、需要と供給が不一致のときに価格調整が働き、均衡価格P0円のもとでQ0量だけ取引され、売り手も買い手もみんなが取引できている。(※これを価格機構という場合がある。)このとき、E点を市場均衡点、P0を均衡価格、Q0を均衡取引量という。
なお、均衡点が描く三角形D1ES1を余剰(総余剰)と呼ぶ。
  市場均衡 市場の需要曲線はさまざまな消費者の需要量の合計である。他方供給曲線は、市場に参加している企業の、さまざまな価格に対するそのとき(短期)の生産量の合計である。 短期の市場均衡 短期の市場均衡は需要曲線と供給曲線の交点で決まる。ある特定の商品の市場では需要と供給によって取引され、需要量と供給量が異なれば価格で調整される。その結果、需要量と供給量が一致する価格に落ち着き市場は均衡するという。ここでは、どの売り手もどの買い手も取引環境に新たな変化がない限り取引を実現できることになっている。先の図「市場均衡」によれば、供給曲線と需要曲線の交点(E)を市場均衡点といい、そのときの価格を均衡価格、取引量を均衡取引量という。 長期の市場均衡 各企業は同じ水準の技術や生産による供給とし、さらに埋没費用を無視すれば長期供給曲線は水平になる。よって、この場合の長期の市場均衡は、水平な供給曲線と右下がりの需要曲線の交点で決まる。※埋没費用は、撤退時に回収が不可能な費用。 さまざまな均衡の変化(不均衡) 市場不均衡図 所得変化による需要量の変化(この場合は需要曲線がシフトすることになる)、あるいは代替財の価格変化による需要量の変化(この場合は需要曲線上の需要変化)、生産量の変化による供給量の変化(供給線のシフト)、あるいは価格変化による供給量の変化(この場合は供給曲線上の供給変化)などがある。 非効率な均衡(不均衡) 図「非効率的な市場均衡」において、仮に、取引量がQ’ならE点の総余剰より少ない総余剰になり、余剰損失が生じる。これは、資源配分が非効率なため社会が失うもので、死重的損失(または死荷重)という。三角形EFGがそれである。  
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(3) 競争的市場の資源配分機能  メロンの取引では、外生的に調整された価格によって需要と供給が一致するところで市場が均衡するとした。このとき、買い損ねた買い手も、売り残した売り手もいない。まさに効率的に資源が配分されている。このような条件が伴う市場を完全競争市場というが、価格補正が行われる市場を競争的市場とするなら、競争的市場でも資源の配分は効率的に行われると考えられる。 ※ここでの「競争的市場」は完全競争市場ほどに4条件の完全性はなく(不完全競争市場)、独占市場ほどに参加者が価格設定者(プライスメーカー)でもない市場としている。競争的市場では、市場参加者は価格受容者(プライステーカー)である。   市場の均衡が示す総余剰:特定の取引量から均衡へ 社会的評価と費用図  需要曲線と供給曲線の交点は市場均衡である。ここで、市場の需要曲線の高さを消費の効率性(社会的限界評価)、市場の供給曲線の高さを生産の効率性(社会的限界費用)とする。市場が均衡しているとき、需要量=供給量を1単位増大すれば、社会的限界評価と社会的限界費用の差額(効率性の差である純便益)が発生する。つまり、供給量をゼロから出発して(市場が均衡するところの)需要量=供給量のところまで積み増せば、社会全体には市場取引による便益が得られることになる。これを総余剰という。
※「限界評価」は、1単位需要を増加させるときに支払ってもよい最大の価格。
 図「社会的評価と費用」では、仮に取引量がQ1のときの社会的限界評価は需要曲線との交点(SV1の価格レベル)で、社会的限界費用は供給曲線との交点(MC1の価格レベル)となり、社会的限界評価>社会的限界費用であり、供給量を増大させれば総余剰は増える。逆に、取引量がQ2のときの社会的限界評価は需要曲線との交点(SV2の価格レベル)で、社会的限界費用は供給曲線との交点(MC2の価格レベル)となり、社会的限界評価<社会的限界費用なので、供給量を減少させれば総余剰は増える。結局、社会的限界評価と社会的限界費用が最大で等しく、総余剰も最大となるのは需要曲線と供給曲線の交点にあたる均衡点の取引量Q*である。 「完全競争市場で得られた最大の総余剰は、価格を媒介として消費者余剰と生産者余剰とに均等化され、資源配分は効率的である。」とされる。   資源配分機能  完全競争市場では、個々の経済主体が価格支配力をもたず、価格を所与に自らの利益を最大にするように生産・消費する。つまり、各人の利益追求の結果、価格は財・サービスの社会的な限界評価と限界費用を反映し、価格による需給調整機能を通じて均等化され、資源配分される。したがって市場全体では、価格の需給調整機能を通じ、価格を媒体として消費・生産を決定し、社会的な限界評価と限界費用が均等になるから、資源配分は効率的となる。  
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  パレート効率的、パレート最適 資源配分の変化は誰かの不利なしに他の誰かを有利にはできない状態をいう。これは最も効率的に配分されている状態のことで「限界代替率が等しい」(価格比)。 市場均衡のパレート効率性消費の効率性(社会的限界評価)、生産の効率性(社会的限界費用)、生産・消費構成の効率性をいう。 ※仮にその経済活動に無駄があれば、その無駄を回避して得られる利益を分け合うことで以前より好ましい経済状態になる。 ※パレート効率的とは最適資源配分の基準で、個人AとBがいるとき、Bの状態を悪化させることなくしてはAの状態の改善が不可能な状態をいう。 「パレート最適な状態から配分を変更して別のパレート最適な状態へ移行するとき、ある個人を有利にすれば、必ず他の個人は不利になってしまう。」(H23-14)   ※完全競争市場における4条件の一部が成り立たない場合を「不完全競争市場」といい、競争的市場を含むものとする。   コンテスタブルな市場(コンテスタビリティー理論)……競争原理が働く市場 参入時の費用はすべて退出時に回収できる。潜在的新規参入脅威でラムゼイ料金(次善の策)に近づく市場のこと。 多数の企業が存在していなくても潜在的な参入脅威によって競争原理が働く市場[H16-18] ※実際は価格は幅があり、均衡とアンバランスの境界はいつも変動している。つまり、資源配分が効率的とは言い切れない。   H25-18:競争的市場の資源配分機能(消費税増税と現金給付) H25-20:競争的市場の資源配分機能(エッジワースのボックスダイアグラム) H27-19:競争的市場の資源配分機能(需要の異なる2市場への供給) H28-14:[競争的市場の資源配分機能]需要と供給の均衡 H29-10:競争的市場の資源配分機能(消費者余剰) H29-11:競争的市場の資源配分機能(間接税) H29-21:競争的市場の資源配分機能(関税)  
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(4) 「市場の失敗」と外部性 市場の失敗  市場での取引において、効率的資源配分が実現できないことを「市場の失敗」といい、民間部門には期待できなくなり、政府による価格機構への補正策が必要になる。市場の失敗が生じる理由で代表的なものは、外部性(外部効果)、公共財、費用逓減産業、市場支配力(不完全な競争)などである。   市場の失敗を生み出す要因 ヽ杏性:ある人の行動が他の人に市場取引を通さずに影響を与えること。外部効果ともいう。 よい影響……正の外部性 悪い影響……負の外部性 公共財……次項参照 H駘冂減産業……次項参照 せ埔貉拉枸蓮帖追坿袷瓦紛チ茲任△襪海函10項 産業組織と競争促進 の不完全競争 費用を上回る価格を設定することのできる力。独占企業の自由な価格設定などで、効率的資源配分が実現できない。   外部性(外部効果) ある経済主体の行動が、価格変化を与えずに他の経済主体へ直接及ぼす現象。正の外部効果を外部経済、負の外部効果を外部不経済という。 外部経済 個々の企業の生産量が他の企業(外部)の生産量によって影響を受け、個々の企業の生産費用が節減される。費用構造は、「私的限界費用>社会的限界費用」なので、補助金により研究開発を促進する。例:「市場の拡大」。 外部不経済 供給量が限られているために市場が拡大すると要素価格が上昇すること、二酸化炭素発生などで外部に負の便益を与えることなど。費用構造は「私的限界費用<社会的限界費用」なので、課税・規制する(ピグー政策:規制や課税)。例:国際化の進行による通訳の賃金、公害(対策にコースの定理) 例:喫煙による外部不経済への対策 喫煙による周囲の人への迷惑、本人が喫煙で健康を害する及び喫煙による公的医療費支出等で外部不経済だから、喫煙者を少なくする。 対策 ピグー的補正策、ピグー税  第三者が被る損失額を課税することで、社会的限界評価と限界費用が等しくなり、資源配分は効率的になる。(正の外部効果には補助金を付与し、負の外部効果には課税を課す) ※煙草生産者に課しても同じ均衡が実現できる。 外部効果の内部化……市場取引にしてしまうなど。嫌煙権を法制化し、受動喫煙があれば損害請求できるようにする。つまり、喫煙するときは嫌煙権を買い取るとか、喫煙所を有料で利用するなど。※ここで、喫煙権を認めて煙草の喫煙がいやなら喫煙権を買い取る場合も同様なので、「コースの定理」(喫煙者、嫌煙者の何れに認めても構わない)である。 ※「コースの定理」は、取引費用「ゼロ」のとき外部不経済は、原告・被告のどちらに補償しても資源配分の効率性には影響を与えない(同じ効果がある)とされる。 ※ 外部性の例:インターネットの利用の広がりを「ネットワーク外部経済」という。道路の渋滞や温室効果ガスによる地球温暖化などを外部不経済という。    
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※たばこ税 たばこ税図 右図「課税による外部性の内部化」は、たばこ市場の需要曲線と供給曲線が描かれている。たばこ1単位につき価格P0で数量Q0だけ生産・消費されているとする。ここで、たばこ1箱当たりにt円たばこ税を課すと、売り手と買い手が共に税額を負担することになり、消費者価格と生産者価格に相違が生まれる。生産者価格+たばこ税=消費者価格である。したがって、需要曲線の高さ(D0)と供給曲線の高さ(S1)の乖離幅が税率(消費者価格と生産者価格の差)に等しくなる数量が、均衡取引量Q1となる。課税により消費者価格は上昇し、生産者価格は低下し、取引数量は減少する。※現在の日本のたばこ価格は、この減少分を見込んで価格設定されているらしい。<外部効果 ※余剰から見ると、税収に相当する分を政府余剰と呼んで社会全体の厚生とするも、取引量が減少する分は総余剰の損失に当たり「税の超過負担」といわれる。 過去問題の例(H26-14) H26-14問 図   H26-14:市場の失敗と外部性(資源配分:課税) H26-20:市場の失敗と外部性(負の外部性) H27-18:市場の失敗と外部性(課税:従量税) H28-18:[外部不経済(コースの定理)]温室効果ガスの排出量削減  
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(5) 公共財と政府規制 私的財その財・サービスの所有や利用から得られる便益が私的に独占されるもの。 公共財消費の非排除性、非競合性の性質をもつ財で、自由な市場取引では供給できない。フリーライダー問題を抱える。 「メリット財(価値財)」社会的に重要なため私的財より公共財としている。教育、老人医療等 公共財の性質“麈喀性:対価を支払わない主体を消費から排除することは実質的に困難 非競合性:ある主体による消費により、他の主体の消費水準が低下しない 公共財の効率的供給は、フリーライダー問題などがあり困難である。  ※フリーライダー(ただ乗り)問題他人の費用負担で、割安にまたは無料で公共財を消費しようとする「ただ乗り」。 費用逓減産業 市場規模の拡大につれて製造コストが低下し、製品価格も低下する産業(長期供給曲線が右下がりの産業)。電力・ガス、鉄鋼産業などは生産活動開始時に巨額の固定費用が必要になるが、需要に応じて生産していけば平均費用が逓減する、このような産業をいう。 費用が逓減する要因 ゞ眩的外部経済……要素価格(中間生産物の仕入)の低下 技術的外部経済……生産技術の改良による生産費節減 この産業では、先発企業が市場を確立すれば新規参入が困難で、規模の経済による参入障壁が生じ、寡占や独占になりやすい。なお、限界費用は一定(曲線は水平)に近いとされる。 そのため料金で対策 〇夏規制下の平均費用料金規制 限界費用料金の生産量を最善の策とするが、独立採算制とした上で、損失を生まない最も低い価格(平均費用)にする。(限界費用料金では採算割れも生じるので、)次善の策となる平均費用料金にする。この料金をラムゼイ料金と呼ぶ。総括原価方式も同じ。 公営化 公営化して私的利潤の追求を避けようとするもの。しかし、職が保障され、報酬が確実なら努力して経営効率や生産効率を改善させる誘因を持たない。 最善の生産量(死重的損失ゼロ)と次善の生産量(+受益者負担) 参入規制下の限界費用料金規制 (利潤最大化の)限界収入=限界費用の生産量・価格でなく、需要が限界費用に等しい生産量と需要価格にする。しかし、正確に限界費用を把握することは困難であり、規模の経済が著しいと企業の採算割れが生じ、費用の補填が問題になる。また、常に費用最少化を成すか監視できない(x-非効率:参入規制により競争圧力が掛からず、企業として効率性を追及する誘因が欠如する)等の課題もある。  
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政府規制による効率的資源配分(価格機構へ補正) “駘冂減産業への規制……価格規制:平均費用は自立可能、限界費用なら補助金要す (a)平均費用価格形成:平均費用=市場価格  独立採算可能だが費用最小化しない (b)限界費用価格形成:限界費用=市場価格  1単位は赤字なので補助金を要す(パレート最適)、ただし赤字解消努力しない。 ⊇蠧精毒枴政策……競争の貫徹(完全競争させる)によって、公正になる(ケネス・アロー)。 8共組織の手法……バウチャー制度やNPM的手法  <公共料金の種類例   H25-17:公共財と政府規制(自然独占の図) H25-19:公共財と政府規制(住民税の予算制約と補助金) H29-19:公共財と政府規制(公共財・私的財)     7.市場と組織の経済学 (1)取引費用概念 取引費用どこでいくらで売っているのか、品質はどうなのか、注文すれば引き取り?それとも配達?などの取引情報が不完全性な場合に生じる費用をいう。 市場か内部かは、「外部調達」と「内製化」の価格差が市場の取引費用の大きさで異なるとする。 ※「内製化」すると競争原理が働きにくく、生産効率が落ちて費用が上昇すると考える。   ※レントと準レント(一例:様々な使われ方がみられる) レント供給量が固定される生産要素の使用に対して支払う対価(市場に参入するような場合のインセンティブなど上乗せ利益分)で、非経済活動から得られる利益ともいえる。 準レント生産要素として投資する費用のうち、固定費用と利潤の合計(生産者が撤退しないために必要な最低金額を上回る超過分)。 ある資源が3つの用途A、B、Cを持ち、それぞれの利得が1000円、800円、700円とすると、Aの用途を使う。このときの機会費用はBの800円になる。(AでないときはBになるから) 「用途Aで用いた場合の利得と機会費用との差200円は準レントと呼ぶ」 市場へ参入すると、「レントは総費用の平均に等しく、準レントは可変費用の平均に等しくなる。」といわれる。  
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(2)プリンシパル・エージェント概念 プリンシパル・エージェント(プリンシパル:依頼人、エージェント:代理人) 依頼人と代理人のリスクや行動、関係などについて論理整理したものがプリンシパル・エージェント概念である。リスクに対して依頼人は中立的だが代理人は回避的になりやすい。 意思決定者と実行者が異なる場合、代理人(実行者)をどうコントロールするかが課題 参加制約代理人(参加者)にある水準を保証しなければならない(参加のためのインセンティブとして) 誘因制約代理人(参加者)が最適な行動をとって目標達成させなければいけない(成果配分などによって) 「道徳的危険」相手の行動を観察できない場合で、これにはインセンティブ契約が有効 ファイナンスにおけるエージェンシー問題 経営者(エージェンシー)が投資家(プリンシパル)の資金を使って事業を行うことから生じる問題がある。例えば、預託資金利用の案件は審査や投資後のフォローなどで相対的に安易な行動に走りやすい。そのため、投資や企業育成の方向性・方針を明確にし、きちんと伝える。コミュニケーションを緊密にする。   (3)情報の不完全性 情報の非対称 情報が当事者あるいは関係者に行き届かない場合、情報の非対称という。例えば、売り手と買い手がある財の取引をする場合、品質情報や取引情報が非対称だと不完全な市場になる。 モラールハザードを招く(行動が監視できないときに怠業するなど)場合と、逆選択(悪いほうを選んでしまう)場合がある[H18-14] 逆選択情報が非対称のとき、劣悪品を持つ売り手が良品と見せかけて売るために売買価格が低くなり、良品を持つ売り手は市場から去り、市場には劣悪品のみが残ってしまうこと。   レモンの定理中古自動車販売市場を例に、情報が非対称になると品質の悪い車ばかりが残ってしまうとした定理。「レモン」は品質の悪いものをいう。
対策は、シグナリング(中古車の品質保証など)やスクリーニング(第三者の審査など)がある。
※説明:情報が非対称だと、買い手には良品と不良品の識別ができないし、売り手は「良品は高くすぐ売れる」から市場に出さない。結局、買い手と売り手の腹の探り合いなどで市場から良品が姿を消してしまう。   情報の非対称の結果と対策[H18-14] 情報の非対称は、逆選択、またはモラール・ハザードを引き起こす。ゝ嫣択(悪貨が良貨を駆遂する)と自然淘汰は相反する。  ▲譽皀鵑猟衢(偽物がまかり通る)に対する対策は、第三者の認定 9堝阿糧鸞仂寮はモラールハザードを生じるので、利害関係を一致させる仕組みで防ぐ(免責条項、割引制度など)。  
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(4)ゲームの理論  経済行動をビジネスゲームとして捉え理論化したものがゲーム理論。  寡占市場では、ライバル企業の行動が自社の利潤に大きく影響を受けるので相互依存関係といえる。そのような中での最適な行動(経済行動)を考えたり、独占市場における参入を防ぐ行動を考える。   ゲームの理論の様式 参加者をプレーヤーといい、ゲームのルールに従いプレイする。 各プレーヤーがとる行動の順序と行動の選択肢、行動する際の情報をルールで明らかにする。 そしてプレーの結果、プレーヤーは利得(payoff)を得る。利得はゼロの場合やマイナスの場合もある。 ゲームの例:囚人のジレンマ 利得図 強盗の共犯と思われる二人の容疑者A、Bがそれぞれ別件で逮捕され、別々に取調べを受けている。検察は強盗の十分な証拠がないので、黙秘されれば別件の罪で1年ほどの服役で済んでしまう。そこで、どちらかが自白し他方が黙秘した場合は、自白した者は不起訴にし、黙秘し続ける者は20年の服務となるようにした。もし、どちらも自白した場合は、共犯により10年の服役になる。これを二人の共犯者利得マトリックスで示すと右図のようになる。二人が協調すれば望ましい状況になるのに協調が成立しない状況を囚人のジレンマという。<囚人のジレンマ利得表>   均衡 ナッシュ均衡他のプレーヤーがとる戦略を前提に考えたとき、お互いが最適な戦略をとっている状態。どのプレーヤも単独で均衡戦略と異なる選択をしたとしても、自己の利得をふやすことができない状況 クールノー均衡 ライバルの生産量をもとに自社の生産量を決定することでお互いが利得を得ようとする寡占モデル。ライバル企業は生産量を変化させないという想定下で競争すること。先行者利得が得られる市場でも見られる。 クールノーの極限定理 企業数をnとして、市場全体の生産量は、Q=nS/(n+1) 但し、S:市場規模。nが大きくなるほど市場は拡大し、(極限的にQ=Sとなって)完全競争市場の均衡に収束する。 ベルトラン均衡 ライバルの価格をもとに自社の価格を決定することでお互いが利得を得ようとする寡占モデル。ライバル企業は価格を変化させないという想定下で競争し、後攻企業が有利といわれる。「参入に対してP=MCまで価格が下がる。」 シュッタッケルベルク プレーヤーが大企業とその他企業で構成されるクールノー均衡。大企業が生産量を決め、他のプレーヤーが(それに基づき)自社の生産量を決める。複占市場で見られる。クールノー均衡の行動を先導企業(大企業)が知っているとされるケース。 反応関数一方が選択する変数の値(例えば生産量)を大きくすると、他方がそれに反応して選択する変数の値を小さくすること。いわゆる、トレード・オフ。  
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市場における行動:寡占市場における各企業の戦略 協調的行動お互いに協調して行動すれば高い利得が得られるが、カルテルになる。 カルテルの不安定さ カルテル逸脱みんながカルテルを組んでいるとき、自分が低価格で需要を奪い大きな利潤を得ようとする。対策は重い罰則の報復手段を準備する。 新規参入を招きやすい対策は障壁を高くする。 非協調的行動お互いが非協力的であり、お互いが最適な戦略をとっている。(協調的行動よりも)低い利得になる。 価格や数量、入札談合などで協調的行動(カルテル)ならもっと利得が増えるが、非協調的行動なので低い利潤しかえられない。   ゼロサムゲームゼロ和ゲームともいい、一方の利得は他方の損失となり、各プレーヤーの利得の合計はゼロのゲーム。 トリガー戦略協調行動の一つ。相手が一度でも裏切ったら再び相手を許すことはない、という報復の戦略。  ※反対の意味で「しっぺ返し戦略」:1回目協調、2回目以降相手が採った戦略を選択する。 ミニマックス原理 「自分の最小利得を最大化するように戦略を選択する」  いくつかの利得がある場合、最も悪い場合を考えて損失を少なくする行動を選択する考え方 1つのケーキを兄弟で分ける……「兄に切らせ弟に選ばせる」は二人ゼロサムゲーム ※マクシミン(マックスミニ:切る側が確実に利得できる利得)とミニマックス(選ぶ側の利得)   カオス……簡単な規則の単純な繰り返しが複雑な構造をつくる例。 「決定論的」…初期値を決定すればその点からの動きを完全に決めることができる。 「初期値に関する鋭敏な依存性」…初期値をわずかに変化させただけで遠い将来の動きはまったく異なる。「バタフライ効果」   寡占のベルトラン:戦略的行動 寡占市場で、自社の利益を高めるような行動を他社が取るように仕向ける行動 2つのパターンがある。 /緤薪な競争関係にある企業(JALがスカイマーク)に対して ⊃眥湘な競争関係にある企業(MS社がPCメーカー)に対して ,両豺 信頼できるコミットメント(将来の自社の取る行動を明らかにする約束として)の必要性 ・契約(法的に将来行動を拘束するものの不完備になりやすい) ・サンク・コストを伴う投資をする(先んじてサンク・コストを投資しておいて、参入時にも投資すると思わせる) ・評判の形成(参入があると低価格で対応するといった評判を形成する。既存企業は安いコストで生産しているが、参入するには高いコストが要求されるだろうと思わせる)   H25-21:ゲームの理論 H26-22:ゲームの理論(囚人のジレンマ) H27-20:ゲームの理論(ナッシュ均衡とバックワード・インダクション) H29-17:ゲームの理論(2つの支配戦略)  
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8.消費行動と需要曲線 M子さんは、ご飯と牛肉が大好き。彼女は週末に、炊き立てのご飯で焼肉を食べて満足している。1週間の疲れも消えてしまう。   (1)効用理論 無差別曲線 無差別曲線図 M子さんが牛肉とコメを組み合わせて消費するときに感じる満足を「効用」といい、その週の気分や体調を考えて一番満足できるあるいは一番効用を感じる組み合わせを選択すると考える。 いつも牛肉とコメの購買で悩むM子さんの消費行動を無差別曲線で示す。 右の図は、彼女が効用を感じる任意の組み合わせがいくつかあり、それを結んだ曲線を描いたもの。この曲線を無差別曲線と呼ぶ。無差別曲線は、(プラスの効用がある財なら)このように原点に凸で、右下がり(一方の財が減少すれば、他方の財は増加する)で、交わらない。なお、無差別曲線は複数あるとされている。   無差別曲線と限界代替率  使える予算が増えれば牛肉もコメも多く購入したいものだが、予算が限られていればそれぞれの消費量を調整して効用を得ようとする。仮に牛肉の消費量を減少させたとき、彼女はコメの消費量を増加させることで同じ効用を得ようとする。このとき、牛肉の消費量を一定にしてコメの消費量を少しずつ、たとえば100gずつ増加させるとき、得られる効用の量を限界効用という。限界効用は、一方の財の消費量を一定にしたとき、他方の財の消費量を1単位ずつ増加させたとき、その得られる効用の増加量を示す。但し、限界効用は消費量を増加させるにつれて、しだいに低下していくとされる。ビールは最初の1杯目が最もおいしいと感じるのと似て、限界効用逓減という。※効用理論では限界効用逓減が前提となっている。序数的限界効用  また、同じ無差別曲線上の任意の点とその近くの別の点を見た場合、牛肉の減少量とコメの増加量のような関係にあり、この比率を限界代替率という。これは無差別曲線に接する線(接線)の傾きに当たり、牛肉とコメの交換比率に等しい。効用の増加量は、無差別曲線の接線の傾きになる。つまり、限界代替率は彼女の牛肉とコメの主観的な交換比率を表す。 無差別曲線同じような効用を得られる2つの財について、消費の組み合わせによって得られる効用の軌跡を結んだ曲線。無差別曲線は交わらない。 限界代替率逓減(の仮定)ある財の希少性が増すほどその財を得るため他の財を犠牲にしてもよいと考える。 例:縦軸に牛肉、横軸にコメの無差別曲線上には多数の効用があるが、例えば右下に近い点では、牛肉の購買量が少なくコメの消費が多い。つまり、限界代替率が小さくなっている。   H25-14:効用理論(余暇時間と労働時間の代替効果) H29-12:効用理論(無差別曲線)  
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(2)予算制約と消費者の選択行動 予算が5,000円で、牛肉とコメのどちらをどれだけ選択するか?予算という制約の下で効用を最大にする購入量の選択はどうなるか。   ところで、毎回の牛肉とコメの消費には5,000円しか使えない。いつもスーパーでは牛肉1Kgが2,500円、コメ1Kgが500円としよう。 予算制約線図 右図の予算制約線は、彼女のこの場合の無差別曲線と予算線である。 予算線は、(牛肉の価格×牛肉の購入量)+(コメの価格×コメの購入量)= 5,000円 で示され、傾きは、(予算÷牛肉の価格)÷(予算÷コメの価格)=コメの価格÷牛肉の価格=1/5 となる。※この傾きは近所の他の人も同じになる。   なお、予算線と原点の間の三角形の中は彼女の予算で可能な組み合わせが複数存在する。その中で無差別曲線が予算線と接するところで最も高い効用(接点)が得られる。つまり、彼女が合理的に行動するなら、消費者の選択は、予算線と無差別曲線の交点を選ぶ。それは、消費者みんなが市場の交換比率に合わせていくこと。ここに、消費者均衡が成立し、限界代替率=予算線の傾き となる。   予算制約2財を消費するとき、支出額を制約する。支出額が所得を上回ってはいけないことになる。予算制約内で可能な組み合わせを予算集合という。これを予算制約線または予算線といい、その傾きは2財の価格比(牛肉の価格/米の価格)になる。 効用最大化の消費無差別曲線と予算線が接するところ(点)が最大の効用。この点は限界代替率で、傾きは2財の価格比である。 需要曲線各人の牛肉とコメの需要を集めたもの(横にひろがる)がその需要曲線。 ※消費者均衡予算線と無差別曲線の接点(最も効用が大きいところ)を消費者均衡という。 ※消費者余剰ある消費の効用を貨幣で評価したものから、実際に支払った額を引いたもの、つまり獲得した利得。   H26-15:予算制約線と効用 H28-15:[予算制約と消費者の行動]2つの予算制約と消費者  
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(3)代替効果と所得効果 「コメが安くなった」場合に及ぼす効果 財の価格変化は他方の財の消費量に影響を及ぼす(価格効果) 価格効果……財の価格の変化をいい、代替効果と所得効果に分けられるとする(スルツキーの分解) 代替効果代替的な需要の変化。コメが安くなると安くなった分だけコメで代替できる。コメの需要増加。 所得効果所得が増えたような効果。所得や予算は変わらないが、牛肉にまわす分が増えた。※正常財の場合   スルツキーの分解 〜蠡佚に安くなった……他の財と比較:代替効果(常に+) 価格低下は実質所得の増加、よって所得増加により需要は増加:所得効果(種類により+or−)     詳細:コメの価格変化(牛肉とコメの消費) 例:コメの価格が低下した。 このとき、牛肉とコメの関係(財としての連関性)と2つの効果によってコメの消費量を読み解く 価格効果の分解  価格効果=代替効果(常にプラス)+所得効果(±) ※(±)は正常財又は下級財で決まる 予算線が右へ伸びる傾きがゆるくなり、コメの購入量が増える ※横軸はコメなので横軸の切片が右へ移動 (a)代替効果コメの価格低下分、牛肉をコメで代替(安くなった分多く消費できる:沢山食べられる)。つまり、牛肉の購入量を以前より少し減らすだけでコメの購入量を容易に増せる。★コメの消費は増加し牛肉の消費は低下する。 (b)所得効果以前と同じ量だけコメを購入するとすれば、コメの価格が低下した分予算が余り、あたかも所得が増加したように以前より多くのコメと牛肉を購入することができる。但し、所得の増加とともに、消費が増加する財を正常財、消費が減少する財を下級財という。※正常財と下級財の評価は、時代による相対評価 ★コメが正常財なら、コメの価格低下によってコメの消費は確実に増加する。 ※次のページに図で説明  
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図で説明:代替効果と所得効果 代替効果と所得効果図  図は、無差別曲線U0と予算線が接しているとき、彼女は点Pの購入量であった。このとき、コメの価格が低下して新しい予算線と無差別曲線U1が接する新しい点R(新しい消費者均衡)に移るようすを描いたもの。なお、破線は新しい予算線と平行で点Pを通る直線として描いた。 点Pから点Qへの変化 所得は変わらないが、コメの価格変化によってコメを多く購入できる(代替効果) 点Qから点Rへの変化 コメの価格低下分だけ予算が余り、所得が増えたに等しいのでコメも牛肉も多く購入できる(所得効果) 点Pから点Rへの変化 代替効果と所得効果を含む価格効果   過去問から 将来の金利上昇と現在の消費……所得効果と代替効果:[H19-16] 将来の金利上昇と消費水準……予算線と所得効果、代替効果の推移:[H16-20]   整理:コメの価格が低下した 変化するもの〕住酸の傾きが変化する ¬戯絞牟弊も変化する 消費者均衡点が変化(価格効果)する 価格効果は、代替効果と所得効果に分解できる 価格効果 =
 代替効果(コメの消費量が増加し牛肉は低下、常にプラス) +
 所得効果(所得に比例して増減、財により+−あり)
代替効果による連関財一方の価格変化によって他方の消費が変化する。代替財、補完財  <弾力性と財> 所得効果所得増加に比例して、消費が増加するのは「正常財」、消費が減少するのは「下級財」 ※下級財……価格が下落すると需要量が減少する(所得効果がマイナス)。 ※価格弾力性価格の変化と需要量の変化の関係を示し、「コメの1%の価格の上昇はその需要を0.2%下落させる」のように使う。次の性質がある。 ・代替効果と所得効果に依存し、代替財の有無に影響される。 ・多くの野菜は代替財がないから弾力性は小さいが、レタスとキャベツは代替的なのでレタスの価格弾力性は大きい。 ・価格弾力性が小さいほど需要曲線の傾きは大きい。 H26-16:代替効果と所得効果 H27-13:代替効果と所得効果(余暇と消費量) H27-14:代替効果と所得効果(効用最大化) H28-16:[代替効果と所得効果]2財の価格と需要 費用関数による限界費用と平均可変費用 H29-16:代替効果と所得効果(労働供給)  
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9.企業行動と供給曲線  ミクロ経済学における企業の行動は、完全競争市場において単一製品を生産する企業が、どのような生産要素を用いてどれだけ生産するかに注目する。価格は与えられており、生産要素の投入並びに中間投入による費用に着目して一定の生産量を生産するとき、費用を最小にした生産量が利潤最大であるとして、その生産量を決定する。   企業行動の概要 市場は完全競争市場で、そこは、同質の商品を取引する売り手と買い手がともに多数存在し、個々でみると小さいもので価格に影響力を持たない。 生産要素は土地、資本、労働の3つ。これに燃料や原材料などの生産要素の中間投入を加えて生産(価値を生み出し)する。 ※経済学は、従来と同じ生産要素を投入しながら生産量が増加することを技術進歩という。 限界……限界概念(限界効用や限界費用)が資源の最適配分に重要だとする考え方。 生産に要す費用……固定費用と可変費用、総費用=固定費用+可変費用、利潤=収入−費用(総費用) 固定費用(FC)……生産がなくても必要な費用 可変費用(VC)……生産量に比例して必要な費用 平均費用(AC)……生産物1単位当たりの費用 限界費用(MC)……生産量をもう一単位生産するのに必要な費用 生産量の決定……利潤最大化の生産量で、価格と限界費用が等しくなる生産量    
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(1)利潤最大化仮説  企業が生産する製品の市場価格は所与で、企業は生産量を決定して利潤の最大化を図る。ここで、生産量を1単位増やすときの収入は価格であり、生産量を1単位増やすときの費用は限界費用である。したがって、価格が限界費用より大きい限り生産量をふやすことで利潤を増やせる。逆に、限界費用が価格を上回るなら生産量を減らすことで利潤を増やせる。つまり、利潤を最大にする生産量は価格が限界費用に等しいときである。※利潤最大の生産量は、価格(P)=限界費用(MC)の生産量   生産量と費用図 平均費用と限界費用図 生産量が一定のとき費用が最も少なければ利潤が最大となり、企業の生産量として決定される。 まず、費用曲線を考える。図「企業の生産量と総費用の関係」は縦軸に総費用、横軸に生産量をとったもの。 FCは固定費で生産開始までに必要な生産要素である。生産量がゼロのときは固定費の負の利潤が生じる。 生産開始後も生産量が少ない初期は、固定費に加え単位当たり変動費も高い。まだ負の利潤である。 原点からの直線(p)は売上高線であるが、売上高線と総費用曲線が最初に交わる点は損益分岐点に当たる。 ここから正の利潤が生じるものの、生産量が増加して費用が加速度的に増加するようになると、再び交わり、負の利潤が生じる。 損益分岐点と2度目の売上高線と総費用曲線の交点までに、費用が最小になるところがあり、利潤最大化とされる(利潤最大化仮説)。   なぜ?価格=限界費用 限界費用は、費用が最小になるところであり、生産量をもう一単位生産するのに必要な費用である。上の右の図で示すと、この限界費用は平均可変費用と平均総費用のともに最小の点Dと点Cを通過している。左の図では、平均総費用が最小になるのは原点と総費用曲線を結ぶ線の傾きが最小のところ点Aの生産量であり、総費用曲線の接線の生産量に等しく、その傾きを破線で示している。つまり、限界費用は平均可変費用と平均総費用のともに最小の点を通過し、直線の傾きACである。費用曲線の傾きが収入曲線の傾きに等しくなる生産量が利潤最大化生産量であり、ここに、限界費用の性質を見る。  
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費用関数を微分して利潤最大化を求める 利潤最大化仮説は、価格と限界費用が一致する生産量が利潤最大点。これによって生産量の決定がなされる。 価格P=限界費用MC 手順……単一製品を生産しているから費用関数を微分して限界費用を求め、価格と等しくなる解を求める。 総費用関数C=C(X)のとき、平均可変費用AVC={C(X)-FC}÷X、限界費用MC=C’(X)
<リンク:過去問[H19-13]>
  先の右の図「平均総費用ACと限界費用MC」は、左の図「企業の生産量と総費用の関係」をもとに平均費用曲線、平均可変費用曲線および限界費用曲線を描いたもの。限界費用は総費用曲線の接線の傾きを結んだものに相当する。右の図から損益分岐点、操業停止点、利潤最大点を仮定する。 操業停止点価格が単位当たりの固定費用に等しく、生産を続ければ損失になるときの生産量で、操業を停止する。図では、限界費用曲線が平均費用曲線の最下点を通過するところ(点D)。 損益分岐点価格が平均費用(単位当たりの固定費用と可変費用の合計)に等しく、利潤ゼロのときの生産量で、固定費の回収はできる。図では、限界費用曲線が平均可変費用曲線の最下点を通過するところ(点C)。 利潤最大点生産量の決定は、利潤が最大になる生産量であり、価格=限界費用の生産量になる。※価格は所与 図では、生産量Q’<利潤が最大になる生産量 の示す部分(だが限界がある)。 ※限界収入は、もう1単位生産することで増加する収入の増分 H27-15:総費用曲線 H27-17:平均費用曲線と限界費用曲線 H28-17:[利潤最大化仮説]負の外部性を考慮した生産量の決定 H28-21:[利潤最大化仮説]生産関数から解く利潤最大化 H29-14:利潤最大化仮説(総費用曲線) (2)生産関数と限界生産性 等産出量曲線 等産出量曲線図 同じ生産量を得るための資本(生産要素)と労働の組み合わせの集合を等産出量曲線という。 例えば、板金を溶接して製缶する企業を想定する。 この企業は、新鋭の溶接ロボットを1台導入していて、溶接工と溶接ロボットで顧客からの注文に応じて生産している。 この企業の産出量曲線は、縦軸に溶接ロボット稼働時間、横軸に溶接工労働時間をとると原点に凸型の緩やかな曲線を描く。その曲線は右のようになり、等産出量曲線という。 この曲線の傾きは溶接工と溶接ロボットの限界代替率を示し、費用比になる。※消費者の行動を参照 仮に、製品1単位を生産するのに必要な溶接ロボットの1時間当たりの費用が400円、代替的な溶接工の労働費用が1時間当たり2,000円とする。 この時、費用式は 費用C=400×t1+2000×t2 で、t1について解くと切片がC÷400、傾きは価格比の−5となる。但し、t1、t2は必要な時間 費用方程式 先の費用式は費用方程式といわれ、最適な要素投入の組み合わせを示す。したがって、費用方程式とこの企業の等産出量曲線が接するところは費用を最小にすることになる。これは、費用方程式の傾き(2つの要素の価格比)と等産出量曲線の傾きである限界代替率が一致することになる。  
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生産関数と限界生産性 生産要素と生産量との技術的関係を生産関数という。具体的には、労働の場合、労働時間と生産台数の関係などである。この場合の特徴として、労働投入の増加は生産量を増やすが、他の生産要素が一定ならば、生産量の増加は次第に低下する。これを限界生産力逓減の仮定という。つまり、特定の生産要素を倍にしても生産量は倍にならない。その理由は「労働の限界生産力」(他の生産要素を同様に倍にしなければ生産量は倍にならない)による。逆に、すべての生産要素や中間投入を同時に2倍にすると、2倍の生産が可能になる。これを規模について収穫一定の仮定という。   限界生産性は接線 ある生産要素を1単位追加したとき、生産量がどれだけ追加されるかを限界生産性という。先の例ではt1=−(2000÷400)×t2+C÷400 であった。限界生産性はこのように等産出量曲線の傾きで示される。   ○生産量の算出(限界曲線上の点) 利潤最大点:価格=限界費用 :P=MC 損益分岐点:価格=平均総費用=限界費用 :P=AC=MC 価格はMC=ACの水準(TR=TC) 操業停止点:限界費用が平均可変費用の最下点を下回るところ。限界費用を上回る価格なら生産続行。価格はMC=AVCの水準 ※1単位の増産は ヾ袷感チ荵埔譴任浪然焚爾る、 独占市場は価格変動しない   供給曲線(個別企業)……価格と供給量の軌跡(価格変化に対する供給量の変化)=限界費用そのもの 限界費用そのもの……価格がその企業の平均可変費用の最小値までは縦軸で、最小値を超えると限界費用曲線の右上がりの部分となる。 各企業を合わせることで産業の供給曲線ができる。※長期の供給曲線はすべて可変費用になるとされる。 供給曲線の特徴 既に参入している企業の供給曲線……限界費用曲線の操業停止点より上部分 新たに参入しようとする企業の供給曲線……限界費用曲線の損益分岐点より上部分   H26-13:生産関数と限界生産性(生産関数) H26-18:生産関数と限界生産性(利潤曲線) H27-16:生産関数と限界生産性(生産関数) H28-20:[生産関数と限界生産性]生産関数を要素投入量で見る H29-15:生産関数と限界生産性(等費用曲線)  
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(3)費用曲線とサンクコスト 生産に要する費用は、固定費用と可変費用。但し、単一製品を生産しているとする。 総費用=固定費用+可変費用、利潤=収入−費用(総費用) 費用構造 固定費用(FC)……生産量に関係なく必要な費用 可変費用(VC)……生産量に応じて変化する費用 平均費用(AC)生産物1単位当たりの費用。固定費用と可変費用を合わせた費用(総費用:TC)を生産量(X)で割ったもの(平均総費用)に等しくなる。AC=TC÷X 限界費用(MC)生産量をもう一単位生産するのに必要な費用 ※総費用又は可変費用曲線の接線の傾きに相当   可変費用曲線最初の生産量が少ないときは習熟度が低く生産量1単位当たりの追加的な費用は高いが、生産量の増加に伴い低くなる。生産量が多くなりフル稼働になると生産量の増加より費用の増加率のほうが高くなるとされる。 総費用曲線固定費用分を切片とする可変費用曲線が総費用曲線にあたる。最初は規模の経済が働き、その後、生産能力を越えると費用が加速するとされる。※費用関数で表すとTC(x)=VC(x)+FC ※TCは総費用   費用曲線の形状(限界生産力逓減の曲線) 生産能力を超えると生産効率が悪化し、加速度的に費用が増加する。つまり、生産量の変化による可変費用の軌跡(曲線)は、初期の生産量が少ないときは習熟度が低く、生産量1単位当たりの追加的な費用は高い。しかし、生産量の増加に伴い習熟度が高くなると、生産量1単位当たりの追加的な費用は低くなる。さらに、生産量が多くなりフル稼働になると、生産量の増加より費用の増加率のほうが高くなる。したがって可変費用曲線は図(p17の右図)のような曲線を描く。   ※先のp17の左図「企業の生産量と総費用の関係」は企業の短期総費用曲線と言われている。短期総費用関数÷生産量=平均総費用 (TC/X=AC)なので、(完全競争市場で)総収入を微分すれば限界費用が判明する。 費用C=X3-2X2+5X+8 のとき→生産量Xで微分すると 3X2-4X+5 がMC(限界費用)になる。[導関数の利用]   費用の概念 機会費用……選択したため得られなかった収入 埋没費用(サンクコスト)既に投入された固定費用のうち、事業からの撤退時に回収が不可能な費用のこと。回収できないから参入障壁や撤退障壁となる。   H25-16:費用曲線とサンクコスト(費用関数による限界費用と平均可変費用)  
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(4)収穫逓増・逓減 すべての生産要素と中間投入を倍にすれば 規模に関する収穫逓増の仮定生産要素の投入を増やす以上に生産量が増加する。限界生産性は上昇する。 規模に関する収穫一定の仮定生産量は要素投入量に比例するから生産量は倍になる。限界生産性は一定。 規模に関する収穫逓減の仮定生産性が落ちるため、倍の生産量より少ない。限界生産性は減少する。 限界費用逓減の法則……そのため費用投入する割合が増える。 H28-22:[収穫逓増・逓減]市場参入や立地に対する企業行動   (5)規模の経済性・範囲の経済性 規模の経済 生産量の増加に伴い平均費用が減少すること。 平均費用曲線が右下がりで、生産量を増やせば増やすほど生産物1単位当たりの費用(平均費用)が減少していく状態を規模の経済が存在するという。例)液晶only 範囲の経済 複数の製品を別々の企業で生産するよりも単独の企業で生産したほうが生産費用(単位費用)が低くなる。例)〜電事業と発電事業の両方をする。液晶事業と電卓・電子手帳を加えて生産。※この場合は混合合併が生産の効率性を高める。 合併の効果 水平的合併は平均費用を低下する。 水平的合併によって平均費用を低下させようとする。 ※水平的合併……同一市場(同一製品市場、同一地理的市場)で競争する企業同士の合併とする。   10.産業組織と競争促進 (1)市場構造と競争モデル 市場のとらえ方:SCPパラダイム 市場構造が市場行動を決定し、市場行動が市場効果を決定する「市場構造(S)→市場行動(C)→市場成果(P)」という直接的な因果関係が存在する仮説で、産業組織論のきっかけになる。J.S.ベイン   市場構造売り手、買い手の集中度、参入障壁の大きさ、デザイン・品質・公告などにより製品差別化の程度、生産・流通における垂直統合の程度、多角化の程度などの構造上の特徴 市場行動企業の価格決定、広告・宣伝、研究開発、設備投資などの企業行動 市場成果利益率、資源配分効率、生産効率、技術効率、技術進歩、分配の公正など企業行動の結果実現される指標 ※SCP……market Structure(市場構造), market Conduct(市場行動), market Performance(市場成果) 「SCPパラダイム」[H15-14]……市場構造が参加企業の行動を決め、成果も決めてしまう、とする産業組織論の考え方 市場構造は市場内の企業数、集中度、差別化程度、参入性など。市場行動は生産・価格の決定、協調度など。市場成果は製品の質・価格・量、厚生など  
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企業数からみる市場の構造 独占市場 売り手1人の市場で、「x非効率:競争がないので費用が上昇し価格も上昇する市場」といわれる。 「限界費用=限界収入」となる供給量を決定するが、需要に見合った価格決定を行う(価格支配力を持つ)。つまり、(生産量が少ないのに価格が高めで)利潤最大化行動を実現。 ※限界収入……もう1単位生産することで増加する収入の増分 独占市場が生じる理由必要な生産要素を(特許等で)保有する、生産による規模の経済性もしくはネットワークの外部性が働いている、公的規制による参入の規制などで参入障壁がある。 独占企業の価格設定費用を上回る価格を設定する力を持つ、つまりプライス・メーカー(市場価格支配力を持つ)。   複占市場 売り手2人の市場で、お互いがお互いの行動に反応する。クールノー均衡が成立している。  競争的に行動すると、生産量が多くなる一方で価格が低くなり利潤が低下すると予想できるから、カルテルを形成しやすい。お互いの生産量に反応して利潤最大化をはかろうとする(クールノー・モデル)。同質的財の市場で十分な生産能力を持つ企業同士がクールノー競争(生産量競争)を行うと、相手との(力関係による)反応関数の交点(クールノー均衡)で決まる。しかし、必ずしも最適な又は均衡な生産量の反応ではない。  お互いの価格に反応して利潤最大化をはかろうとする(ベルトラン均衡)場合もある。同質的財の市場で十分な生産能力を持つ企業同士がベルトラン競争(価格競争)を行うと、価格は限界費用と等しいところまで低下する。よって完全競争市場に近くなる。 ※ベルトラン均衡は完全競争へ進展する。   寡占市場 売り手が少数だけで競争する市場。ライバルの行動を意識して行動を決めることになる。 同質的財の市場で十分な生産能力を持つ企業同士がクールノー競争(生産量競争)を行うと、相手との(力関係による)反応関数の交点で決まる。しかし、必ずしも最適なまたは均衡な反応ではない。※複占市場と同様 <クールノーの極限定理>   ※複占市場、寡占市場ともカルテルを選べば独占と同じ価格と生産量になり、ベルトラン競争を選べば完全競争、クールノー競争なら両者の中間になるとされる。ベルトラン競争は価格低下競争になる。クールノー競争は生産量の選択により価格が決まると考えられ、企業数が増えると生産量が増加し、価格は低下する。つまり、企業数が多くなるほど完全競争に近くなる。したがって、寡占市場では競争の激しさによって価格が変わり、競争が激しいほど価格は低下するであろう。  
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想定する市場(競争の程度で類型) 完全競争市場……1単位の増産は、価格変動なし。 不完全競争市場……1単位の増産は、価格下がる(生産量に影響される)。 不完全競争とは競争の不完全性をいい、寡占市場、独占市場が該当。 独占的競争市場……価格支配力を持ちながら多くの企業が市場で競争している。右下がりの需要曲線(市場価格は限界費用より高い)。 製品差別化された市場で多くの売り手が存在し、参入・退出が自由である市場。MR=MCの生産量 特徴は、‖召隆覿箸寮源採漫価格を一定(所与)として自社生産量を決定する。長期的には各企業の参入・退出は自由。 製品差別化されており価格支配力を行使できる(プライスリーダーである)。   H26-19:独占市場 H29-18:市場構造と競走モデル(商品の需給)   独占企業の非効率図   (2)独占の弊害と寡占下の協調行動 独占企業の非効率性 独占企業は利潤が最大となる価格設定を行う。この価格は限界収入と限界費用が等しい生産量で、市場の価格設定になる。 価格が限界費用より大きいので、生産量を1単位増やす時の社会的な価値(支払許容量)は費用(限界費用)より大きく、社会的に生産量を増やすことが望ましく、独占均衡での生産量は最適な生産量に比べて過小であるから非効率である。死過重である。   独占の弊害 x非効率:競争がないので費用が上昇し、価格も上昇する。消費者余剰(本来の均衡点での余剰よりMC以上の部分)が減少する。 対策:限界費用価格形成原理(完全競争市場価格と同じになるように規制する(MC=MRの価格に))、平均費用価格形成原理(平均総費用曲線ACと需要曲線Dの交点価格になるように規制する) 独占企業への価格規制として、プライスキャップ方式(前掲)、ヤードスティック方式(地域ごとの独占などのような場合に、効率化の指標を比較して意図的に競争させる)がある。 寡占下の協調行動……ある企業の行動が他の企業の価格や供給量に影響を与える。 _然弊鑪、数量戦略への影響 (先のゲーム理論) 価格が硬直的:寡占価格はフル・コスト原理(1単位の利潤は平均費用のm倍(マークアップ))  
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費用逓減産業の費用図 公営企業の独占:費用逓減産業 自然独占……複数の企業で生産するより、1社で生産したほうが総費用が小さくてすむとき。電気・ガス・水道・鉄道などの産業。電気事業は特に産業の設立費用(セットアップ・コスト)が大きい。 費用逓減産業 平均費用曲線と市場需要曲線の交点で平均費用曲線が右下がりになる。これを費用逓減産業という。独占価格(MR=MCの生産量で需要曲線の価格)にすると死過重が大きいので、需要曲線と平均費用曲線が交わる価格=平均費用となる生産量と平均費用価格に規制できると死過重は最小化する。※右図のような費用曲線   自然独占としての費用逓減産業の価格設定図 費用逓減産業の平均費用価格規制の図 公正報酬率規制 現実的に需要曲線などの情報が得にくいので平均費用価格は実現しない。そこで、総括原価方式である規制が生まれる。総括原価=営業費用+減価償却費+公正報酬率×事業資産 そこで、需要予測などで 総収入=営業費用+減価償却費+公正報酬率×事業資産 となるような価格規制をする。 ※アバーチ・ジョンソン効果 総括原価方式による公正報酬率規制で価格設定されているとき、その企業が必要以上に多くの事業資産を保有することで利益を増やそうとする現象。公正報酬率が資本の機会費用より高い水準に設定されていると、より多くの事業資産を保有することで総括原価を引き上げ、総収入と利益を増加させられる。しかし、日本では、公正報酬率が高めなら設備投資への動機づけになり、ユニバーサル・サービス規制によるサービスの早期普及などが行われた。 H28-23:[独占の弊害と寡占下の協調行動]寡占市場の限界費用と生産量  
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(3)製品差別化と独占的競争 製品差別化 同じ種類の財を供給している企業が、デザイン、品質、広告、販売方法などを通じて消費者に異なる財であると認識させている。また、一見同質的な財・サービスでも、ある種の異なる付帯サービスが同時に消費されるなどで異質なものとして消費者に認知される場合をいう。 水平的製品差別化消費者の好みによる差別化で、価格競争生じる。ノートPCとデスクトップPCの違い。 垂直的製品差別化ブランド、デザイン、品質や性能の違いなどによる差別化で、競合品より高い価格設定が可能になる。研究開発によるプロダクト・イノベーションやブランド力を高める広告も垂直的製品差別化を可能にする。 非価格競争 寡占的市場で行われる競争形態で、製品価格よりもブランド、品質、デザイン、広告、販売方法などで製品差別化を図り、市場競争を行う。製品価格は協調的に維持していく。 製品差別化と独占的競争 製品が差別化された企業の価格付けは、独占企業のそれと同じ(プライスリーダー)。互いに密接な代替財を供給する売り手が多くいても、製品差別化によって売り手がある程度の価格支配力をもつ市場を「独占的競争にある」という。 独占的競争 企業は多数存在し、それぞれのシェアは小さい。企業の製品は差別化され、それぞれ価格支配力をもつ。長期で見れば参入や退出は自由。 短期(企業数が一定)他の企業より高い価格を設定しても、製品差別化によりすべて需要を失うことはない。P=MR=MCの生産量と価格 長期(参入で満杯)価格が平均費用より高いと参入が盛んになり、既存企業の一部は参入企業によって奪われることもある。よって、P=ACの価格、生産量になる。 結果的に、〜蠍澎預鹸愀犬鮃佑┐困帽堝阿垢襦↓∈絞眠修気譴神宿覆砲弔い討脇叛蟯覿箸旅堝阿鮗茲襦⇒潤が得られ参入も出てくる  
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価格の差別……企業が同一の財・サービスを異なる価格で販売すること。 完全価格差別消費者から余剰をすべて奪う価格差別。例:ある財を1つずつ販売するとき、個々の消費者に異なる価格で販売する場合。しかも、企業は個々の消費者の支払許容額を知っており、その価格で販売する。さらに、消費者はそれを転売できない。 〇埔貶割により利潤を高める 需要の価格弾力性の小さい人(値上げしてもあまり消費を減らさない人)に高い価格を、需要の価格弾力性の大きい人(値下げすると消費を大きく増やす人)に低い価格をつける。 二部料金……固定料金と従量料金。1個当たりの平均単価は購入量が多いほど小さくなる 数量割引……大量に購入するほど単価が低くなる 例:市場分割による利潤増加:格安航空会社ピーチ 需要の価格弾力性の小さい市場で価格を引き上げているので生産量の減少は小さく、需要の価格弾力性の大きな市場で価格を引き下げているので生産量の増加が大きい。つまり、今まで利用しなかった人の利用を期待できると総余剰が増加する可能性が高い。 その他価格戦略 抱合せ販売主たる財の販売に補完的な従たる財を合わせて販売すること。例:インクジェット・プリンターとインク  ※抱合せは総余剰も高める。 従たる商品の価格を高く、主たる商品の価格を安くして利益を得る。主を固定料金、従を従量料金とも考えられる。従たる商品の使用量が大きいほど、従たる商品1単位当たりの主たる商品の費用(平均可変費用)は小さくなるので数量割引にも相当する。 バンドル主たる商品と従たる商品の比率が一定の場合。  
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(4)参入障壁と市場成果 参入 ある財の市場で、それまでその財の供給を行っていなかった企業が新たに供給すること。いわゆる「市場への参入」。独占市場では独占の利潤が発生するため、他の企業にとってその市場への参入のインセンティブを与える。そこで、独占企業は新規参入を防ごうとする。   参入障壁 巨額のサンク・コストが参入障壁・退出障壁になる 特許等の保有 政府による参入規制   不完全競争市場の参入阻止 「参入阻止価格」 [奪的価格設定  :新規参入企業の費用水準を下回る価格で排除 過剰生産能力   :生産能力をアピールして価格競争力を示す 制限的価格設定  :意図的に高価格を設定して新規参入を誘発しないようにする   参入の経済効果 十分に高い利潤を既存企業が獲得していている場合や、将来的に成長の期待できる商品分野・産業であれば参入へのインセンティブが高まる。新規参入が発生すると、価格低下などで既存企業の利潤は減少する。概ね、参入の自由な競争圧力の強い市場では技術革新が激しいが、参入障壁があることで外部からの競争圧力が弱い市場は技術革新は弱い。   コンテスタブル市場理論……参入圧力が非常に強い独占市場における価格づけ コンテスタブルな市場次の3仮定により、参入障壁は存在しない。たとえ独占企業でも利潤を獲得できない。 ヾ存企業は潜在的参入企業に対して何ら優位性を持たない。需要、費用条件が同じ。 ∋夏企業が既存企業より低い価格を提示して参入すると、消費者はすべて参入企業から購入。 参入に伴うサンク・コストが存在しない(自由な参入が可能)。  
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(5)研究開発と技術革新  日本国内の技術革新は、基礎研究や応用研究よりも開発技術が中心になっている。開発技術は特定製品の開発に直接関わる技術のことで、製品の開発に直接的に結び付く。なぜなら、企業からみれば基礎研究や応用研究は、研究開発のリスク・不確実性が大きいために研究開発コストを実施企業が回収しにくい。それで国は研究開発への助成を行って、その成果が助成を実施する産業以外へも拡散することを狙う。   技術革新  製品の技術革新(プロダクト・イノベーション)と製造方法の技術革新(プロセス・イノベーション)に分けられる。 技術革新の役割 経済発展・経済成長をもたらす技術進歩 参入障壁となる技術革新(特許取得など) 新たな市場への参入のための技術革新   H29-22:研究開発と技術革新   (6)事業活動の国際化と通商政策  通商政策は、自由貿易か、保護貿易かのどちらかである。永年迷いながら政策実施してきたように見える。   H26-21:関税撤廃 H27-21:TPP  
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(7)中小企業と産業政策 産業政策:日本型の特徴 「政府が目標を設定し、官民協力してその達成を図る国家主導型市場経済システム」 目標として助成する産業を選択し、そこへ政策金融や租税特別措置などを重点的につぎ込む。※「ターゲティング」政策といわれる   中小企業政策 国内の企業を見ると、大企業と中小企業の規模の差による二重構造を成していた。その差は賃金格差である。一方で、中小企業は職人気質や下請制など様々な要素で特色ある企業を生み出している。そんな中、平成12年度から政策の中心を公正な競争促進へ転換した。 市街地商店街の空洞化 スーパーマーケットは、小売業における技術革新である。その普及段階で、スーパーマーケットの出店をめぐり商店街とのトラブルが生じ、商店街の保護を目的とする大規模小売店舗法が制定された。そのために大型スーパーの参入を規制するも、自動車の普及によって、規制を受けない郊外への進出が進み、中心市街地商店街は空き店舗による空洞化が加速されたようだ。しかし、コンビニエンス・ストアの普及は別の側面も教えてくれる。便利で魅力的な品揃えの重要性を。 50年を超える中小企業政策 「地方創生」と小規模企業政策……中央から地方へ。しかし、地域に任せきれない現実があり複雑化を増す。 毎年、沢山の施策が実施されているが、小規模事業者が大幅に減少するなど、政策の成果に疑問を感じる人もいるという。 ※見直しの時か?   H25-23:中小企業と産業政策(環境政策と京都議定書) H27-22:産業連関表 H27-23:生産・出荷集中度調査  
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(8)規制緩和と民営化 規制と生産性への影響 全要素生産性成長率は、労働・資本などの生産要素の投入量増加率を超えて生産活動の結果生み出された付加価値の増加率を示すもの。競争的な市場といえる製造業は、他の産業より高い成長性を示している。各国で規制緩和・民営化が進む産業を見れば、日本の電気・ガス・水道、運輸・通信、サービス産業はアメリカと比べて生産性が劣っている。   規制緩和 産業に対する行政介入を可能な限り排除し、制度や仕組みの国際的整合性をはかり、競争原理の導入によって効率の上昇と価格低下とを実現しようとするもの。 規制のメリット:自然独占の弊害の防止、外部不経済の調整 規制のデメリット:規制の経済的コスト、非効率性の温存、技術革新や積極的な事業展開を阻害する恐れ ※レント・シーキング(規制を自らに有利にしようとする当局へ働きかける行動)があること 規制緩和の効果……価格が低下する   民営化……役割を終えた公的企業の民間企業への移行。 民営化による廃業は、労働力の再配分になる 形態の変更……経営の裁量の幅を広げる 所有の変更……政府保有株式の売却 生産の変更……民間が生産・提供 ※「官業による民業への圧迫」をなくす   日本の市場重視の経済政策(経済構造改革) 規制緩和(電力・航空・金融)、民営化(郵政民営化、道路公団民営化)、 企業結合の緩和(持株会社の解禁他)、競争政策の見直し(独占禁止法改正) ローカリズム(地域主義)へ 地域自身で新しい企業や産業を起こし、成長させ、次の産業を連鎖的に創造する。農商工連携などで、直売所から加工場や農村レストランへ拡大していくことが望まれる。背景には、国内マーケットの縮小、新興国の発展に伴い企業誘致依存の地域づくりの行き詰まりのほかポスト工業化も。   歳出改革年金改革、社会保障改革、診療報酬改革、三位一体改革、政策評価モデル、バウチャー制度導入(バウチャー:証明書、引換え) 地域経済移出入依存度、NPM的手法(ニューパブリックマネジメント、PFI導入、会計制度導入、地方公共団体の自律・自立をすすめる)   11.その他経済学・経済政策に関する事項   H25-12:ミクロその他(トービンのq) H25-13:ミクロその他(消費者の消費関数) H26-23:リスクプレミアム(行動経済学?) H29-23:その他(少子高齢化)  
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      参考図書 入門経済学 猪木武徳、鴇田忠彦、藪下史郎編著 有斐閣 2000 産業組織論 泉田成美・柳川隆著 有斐閣 2008 経済学 基礎と方法 時政勗著 牧野書店 1999 中小企業診断士試験問題 平成13年〜29年 中小企業診断協会  他 日本経済新聞 学習ノート