金融政策を振り返る
金融政策を行う主体は日銀で、物価の安定と金融システムの安定を目的としている。
日銀は「発行銀行券」である貨幣を発行して流通させ、信用創造を経てその多くは市中金融機関の預金となって貸し出されている。
流通現金(発行銀行券額に貨幣流通高を加えたもの)と日銀当座預金額を加えたものがマネタリー・ベースといわれ、日銀がコントロールできるとされている。
このなかの日銀当座預金は、市中金融機関が持つ預金の証拠金のようなもので、預金準備制度といわれる。
預金準備制度は、金融機関が持つ預金の額に応じて一定割合を日銀に預ける義務のこと。
一定割合は「準備率」とも言われ、そのほとんどに利息が付く(今は0.1%ほどの付利)ようだ。
市中金融機関にすれば、一定割合を預ければ義務が果たせるので、それ以上の額は日銀に預けても良いし、企業等に貸し付けても良い。
つまり、市中金融機関にすれば資金需要があり企業などに貸し付けるほうが利益になるなら、当座預金から引き出す。
しかし低金利下なら、日銀当座預金に預けるだけでも利息が付くのでそのほうが「魅力的」かもしれない。
ここにデフレ脱却できなかった原因がありそうだ。 リンク:日本銀行の決まり、日本銀行法
金融政策の中でマイナス金利があるが、それは一般に、日銀当座預金に預けた一部に「マイナスの金利になる」政策で、預けるより市中で使いなさいと誘導している。
非伝統的金融政策でも、市中の金融機関が持つ国債を日銀が買い入れ、その代金を日銀当座預金に移している。
国債の買い入れ額が大きく、日銀当座預金の総額はとても多額だ。その多くの部分は付利(利息が付く)だが、利息と手数料が同じ(ゼロ金利)部分と利息より手数料が多いマイナ
ス金利の部分の三つに分けられるようだ。
金融政策に関する用語などを拾ってみた。
伝統的金融政策は、預金準備率の操作、基準割引率及び基準貸付利率の操作(日銀が貸し出す金利で一般的な政策金利、以前の公定歩合操作:2006年8
月変更)及びオープン・マーケット・オペレーション(買いオペ、売りオペ)とされている。
なお、短期金利を無担保コール翌日物金利としていたが、現在は上限的金利とされているようだ。
長期金利は、10年物国債の利回りとされている。
他方、非伝統的金融政策はゼロ金利策、包括的緩和策、量的緩和策または量的・質的緩和策あるいはQQEなどがあるようだ。
QQEは、量的(Quantitative) and 質的(Qualitative) 緩和(Easing)である。
また金融政策で用いられるものとして、イールドカーブ(残りの短い期間の債券から順に利回りを並べてグラフ化したもの)
コントロール(長短金利操作)、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託証券、Jリートとも)がある。
1999年2月6日に、米国からの希望もあり初めて日銀が国債を引き受け始め、翌月末の日銀のB/S(貸借対照表)には「国債58兆4435億円」となっている。
当時は「長期金利が上昇する」とか「(日銀の)信認が失われる」「制御が効かないインフレになる」などと言われていたようだ。
それから20年ほど経過した、2019年度末に日銀が保有する国債の残高は485兆円になっている。
この間の経済成長は「失われた20年」といわれ、さらに10年加算されて「失われた30年」とも聞こえてくるように、ほとんど成長していない。
なお、2019年度としたのは、新型コロナによって国債の発行が多額になったためにその影響を除くためである。
※お詫び:前回出稿は「2020年度」としていましたが、2020年3月31日までの2019年度です。
ここでは、日銀新総裁の就任に合わせてバブル崩壊後の金融政策を振り返り、知識を確認しながら国の課題に触れてみたい。
伝統的金融政策から飛び出して20年超になるが、その間に行われた金融政策を3つに分けてみた。
それぞれ初期、中期と協調期、後期としよう。
最初は恐る恐る政策を実施していた非伝統的な政策だが、その範囲は徐々に大きくなり、今では日銀が保有する国債はGDPを超えてしまった。
まさに「取り返しのできない規模」になり、多くの人は「孫世代には残したくない」と感じる結果になってしまった。
下図は、日本銀行(以下、「日銀」という。)の令和2(2020)年度の決算より写したバランスシート(B/S)である。
この中で企業の純利益に当たる「雑勘定12(剰余金)」は全額ではないが国庫納付金に相当し、国に納められるようだ。
つまり、金融政策を行いながらその成果を納付しているともいえる。
日銀の総裁は概ね5年ごとに代わっているが、先ごろ新たに植田新総裁が就任した。
これを機にバブル崩壊後の金融政策を振り返り、仮説「非伝統的金融政策は2〜3年の短期なら効果がある」を考えよう。
なお、B/Sなどの資料は日銀のサイト(https://www.boj.or.jp/)から取得した。
バブル崩壊後の金融政策を振り返ってみて、
仮説「非伝統的金融政策は2〜3年の短期なら効果がある」を導いてみたい。
但し、仮説の検証はしない。
参考資料:以下の書籍や新聞報道を参考にしています。
日本の財政 平成30年版 宇波弘貴編著 2019年2月13日 財経詳報社
現代財政を学ぶ 池上岳彦著 2015年3月30日 有斐閣
マイナス金利政策 岩田一政、左三川郁子、日本経済研究センター共著 2016年8月10日 日本経済新聞社
最後の防衛線 中曽宏著 2022年5月16日 日経BP
日銀漂流 西野智彦著 2020年11月26日 岩波書店
金融の「しくみ」と「理論」 野崎浩成著 平成27年12月10日 同文館出版
日銀日記 岩田規久雄著
統計でみる日本2021 日本統計協会編集 発行2021年1月
日本経済新聞、毎日新聞
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