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第1問(H30年)
 企業の多角化に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 外的な成長誘引は、企業を新たな事業へと参入させる外部環境の条件である
 が、主要な既存事業の市場の需要低下という脅威は、新規事業への参入の誘引と
 なりうる。
イ 企業の多角化による効果には、特定の事業の組み合わせで発生する相補効果
 と、各製品市場分野での需要変動や資源制約に対応し、費用の低下に結びつく相
 乗効果がある。
ウ 企業の本業や既存事業の市場が成熟・衰退期に入って何らかの新規事業を進め
 る場合、非関連型の多角化は、本業や既存事業の技術が新規事業に適合すると判
 断した場合に行われる。
エ 事業拡大への誘引と障害は、企業の多角化の形態や将来の収益性の基盤にまで
 影響するが、非関連型の多角化では、既存事業の市場シェアが新規事業の市場
 シェアに大きく影響する。
オ 内的な成長誘引は、企業を多角化へと向かわせる企業内部の条件であり、既存
 事業の資源を最大限転用して相乗効果を期待したいという非関連型多角化に対す
 る希求から生じることが多い。
第2問(H30年)
 経営資源の1つとして区別される情報的経営資源に関する記述として、最も適切
なものはどれか。

ア 企業活動における仕事の手順や顧客の特徴のように、日常の業務活動を通じた
 経験的な効果として蓄積される経営資源は、情報的経営資源には含まれない。
イ 企業活動における詳細なマニュアルや設計図は、熟練やノウハウなどの情報的
 経営資源と比較して模倣困難性は高くない。
ウ 企業にとって模倣困難性の低い情報的経営資源が競争にとって重要ならば、特
 許や商標のような手段で法的に模倣のコストを高める必要性は高くない。
エ 企業の特定の事業分野における活動で蓄積された情報的経営資源は、その事業
 に補完的な事業分野でしか利用できない。
第3問(H30年)
 企業の経営資源に基づく競争優位を考察するVRIOフレームワークにおける模
倣困難性は、持続的競争優位を獲得するために必要な条件とされている。この模倣
困難性に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア A社が、模倣対象のB社が保有する経営資源やケイパビリティと、B社の競争
 優位の関係を理解しているか否かは、A社がB社の模倣を行う時のコストに影響
 を与える要因にならない。
イ C社が、新規事業に必要不可欠な経営資源を、その将来における最大価値を下
 回るコストで入手した場合、競合会社D社が、C社より相当に高いコストでも同
 様の経営資源を獲得できる限り、C社の経営資源に模倣困難性はない。
ウ 最先端の機械Eを使いこなすために熟練技能者同士の協力関係が必要であり、
 かつ、熟練技能者同士の協力関係の構築に相当な時間とコストを必要とする場
 合、最先端の機械Eを所有しているだけでは、模倣困難性による持続的競争優位
 の源泉にはならない。
エ 相当な時間を要して獲得したF社のノウハウやネットワークが、優れた製品を
 生み出すための重要な要素で希少性もあり、また競合会社が短期間で獲得するに
 はコスト上の不利が働くとしても、F社の模倣困難性を持つ経営資源にはなりえ
 ない。
第4問(H30年)
 企業の事業再編と買収の戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 企業の一部門を買収するタイプの買収は、通常、企業のレバレッジド・バイア
 ウトと呼ばれ、もともとは経営資源の拡大を意図したが、マネジメント・バイア
 ウトやエンブロイー・バイアウトとは異なる範疇はんちゅうの手法である。
イ 事業規模の縮小は、通常、売却、企業の一部門の分離独立であるスピンオフ、
 企業の中核事業に関連しない部門の廃止などの手法を指し、事業ポートフォリオ
 を変えて短期的には負債の削減につながる。
ウ 事業範囲の縮小は、企業買収によって期待した価値を実現できない際の買収見
 直しに用いられ、通常、従業員数や事業部門数の削減を伴い、事業規模の縮小と
 同様に事業ポートフォリオを変えることになる。
エ	自社資産を担保に調達した資金によって、オーナーではない経営者が自社を買
 収するタイプの買収は広義のレバレッジド・バイアウトの一形態であり、通常、
 買収後には経営の自由裁量の確保や敵対的買収に対する防衛などのために株式を
 非公開とする。
オ プライベート・エクイティ投資会社が、企業の資産の大部分を買い取って当該
 企業を非上場化するレバレッジド・バイアウトでは、通常、当該企業の業務を維
 持し、資産の売却は長期的な計画の下で行う。
第5問(H30年)
 マイケル・ポーターによる業界の構造分析に関する記述として、最も適切なもの
はどれか。

ア 価値連鎖(バリューチェーン)を構成する設計、製造、販売、流通、支援サービ
 スなどの諸活動において規模の経済が働くかどうかは、その業界構造を決定する
 要因であり、多数乱戦(市場分散型)業界では、すべての諸活動において規模の経
 済性が欠如している。
イ 継続的に売り上げが減少している衰退業界においては、できるだけ早く投資を
 回収して撤退する戦略の他に、縮小した業界においてリーダーの地位を確保する
 ことも重要な戦略の1つである。
ウ 成熟業界においては、新製品開発の可能性が少なく、成長が鈍化するために、
 多くの企業は、プロセス革新や現行製品の改良に力を入れるようになり、企業間
 のシェア争いは緩やかになる。
エ 多数乱戦(市場分散型)業界は、ニーズが多様であること、人手によるサービス
 が中心であることが特徴なので、集約・統合戦略は、この業界には適さない戦略
 である。
第6問(H30年)
 価値連鎖(バリューチェーン)のどれだけの活動を自社の中で行うかが、その企業
の垂直統合度を決めると言われている。自社の中で行う活動の数が多いほど、垂直
統合度が高く、その数が少ないほど垂直統合度が低いとした場合、ある部品メー
カーA社が垂直統合度を高める理由として、最も適切なものはどれか。

ア A社の部品を使って完成品を製造している企業は多数存在しているが、いずれ
 の企業もA社の部品を仕入れることができないと、それぞれの完成品を製造でき
 ない。
イ A社の部品を作るために必要な原材料については、優良な販売先が多数存在し
 ており、それらの企業から品質の良い原材料を低コストで仕入れることが容易で
 ある。
ウ A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーは、その原材料
 をA社以外に販売することはできない。
エ A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーが少数であり、
 環境変化により、A社はこれらの原材料の入手が困難となる。
オ A社は、A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーとの間
 で、将来起こりうるすべての事態を想定し、かつそれらの事態に対してA社が不
 利にならないようなすべての条件を網羅した契約を交わすことができる。
第7問(H30年)
 部品の開発や生産をめぐる完成品メーカーと部品メーカーの取引関係は多様であ
る。そのような取引関係に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 委託図方式では、部品メーカーが部品の詳細設計を行うので、図面の所有権は
 部品メーカーに帰属し、部品の品質保証責任は完成品メーカーが負うことにな
 る。
イ 承認図方式では、発注側が準備した部品の詳細設計に基づいて製造できる能力
 やコストを評価して部品外注先が選ばれる。
ウ 承認図方式や委託図方式では、部品メーカーには製図能力ばかりでなく設計開
 発能力が要求される。
エ 貸与図方式では、発注側が提示した部品の基本的な要求仕様に対して、部品
 メーカーは部品の詳細設計を行い、部品を試作し性能評価をすることになる。
オ デザインインでは、部品メーカーは当該部品の開発段階の参加と発注側作成の
 詳細設計に基づく生産能力が求められるが、設計の外注が発生しないのでコスト
 負担は軽減される。
第8問(H30年)
 企業変革は、経営者にとって重要な戦略的課題である。企業におけるイノベー
ションと変革に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 企業内起業家制度は、組織内で自律した位置づけと経営資源を与えられるベン
 チャー・チームを活用することがあり、イノベーションを生み出す企業家精神、
 哲学、組織構造を内部に発展させようとする試みである。
イ 企業の戦略的な優位を達成するために、製品・サービス、戦略と組織構造、組
 織文化、技術の変革に取り組む必要があるが、これらの個々の変革は他と切り離
 して実行でき、各々の変革の結果は相互に独立的である。
ウ 製品イノベーションを戦略的に達成するには、水平的連携が必要となるが、水
 平的連携は、新製品にかかわる各々の部門が外部環境における関連する領域と卓
 越した連携を持つことである。
エ 製品イノベーションを戦略的に達成するには、バウンダリー・スパンニングが
 必要となるが、バウンダリー・スパンニングは、技術、マーケティング、生産の
 各担当者が、互いにアイデアや情報を共有することである。
オ リエンジニアリングは、事業プロセスの急激な設計変更に対応し、プロセスよ
 りも職務を重視した部門の専門化の取り組みであり、組織文化、組織構造、情報
 技術に対して逐次的変化を引き起こすため、従業員が不安や怒りで反応する場合
 がある。
第9問(H30年)
 技術のイノベーションは発生してから、いくつかの特徴的な変化のパターンをと
りながら進化していく。イノベーションの進化に見られる特徴に関する記述とし
て、最も不適切なものはどれか。

ア 技術システムが均衡状態にあることが、技術開発への努力を導く不可欠な力に
 なるので、技術間の依存関係や補完関係に注意することは重要である。
イ 技術進歩のパターンが経時的にS字型の曲線をたどることがあるのは、時間の
 経過とともに基礎となる知識が蓄積され、資源投入の方向性が収斂しゅうれんするからで
 ある。
ウ 優れた技術が事業の成功に結びつかない理由として、ある技術システムとそれ
 を使用する社会との相互依存関係が、その後の技術発展の方向を制約するという
 経路依存性を挙げることができる。
エ 製品の要素部品の進歩や使い手のレベルアップが、予測された技術の限界を克
 服したり、新規技術による製品の登場を遅らせることもある。
オ 連続的なイノベーションが成功するのは、漸進的に積み上げられた技術進化の
 累積的効果が、技術の進歩や普及を促進するからである。
第10問(H30年)
 製品開発期間の短縮を図るために、製品開発のプロセスに注目して、いくつかの
手法を体系的に組み合わせることが行われている。そのような手法に関する記述と
して、最も適切なものはどれか。

ア オーバーラップの開発手法では、開発プロセスの上流タスクの完了前に下流タ
 スクを先行してスタートさせるので、事前に両タスクの内容を綿密に設計するこ
 とが必要である。
イ オーバーラップの開発手法では、開発プロセスの上流タスクと下流タスクの相
 互信頼が強い場合に効果的であり、コミュニケーション頻度や相互の調整を著し
 く減少させることによって開発期間が短縮される。
ウ 開発前半に速いスピードで解決できる問題を集中させて、開発後半で発生しや
 すく、時間や費用のかかる設計変更などの反復回数を減らすことは、開発期間の
 短縮に効果的である。
エ コンピューター支援エンジニアリング(CAE)が開発手法の根本的な変革とし
 て自動車開発で導入が進んでいるのは、コンピューター上でシュミレーションし
 ながら製品の完成度を評価できるので、実物試作が不要になるからである。
オ フロントローディングでは、開発初期段階で開発に必要な経営資源の投入量が
 増加するので、開発後期での設計変更は不要になる。
第11問(H30年)
 創業家とその一族によって所有、経営されるファミリービジネスの中小企業は多
い。ファミリービジネスのシステムを、互いに重なり合う部分を持つ「オーナー
シップ」「ビジネス」「ファミリー」の3つのサブシステムで表すスリー・サークル・
モデルに関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア スリー・サークル・モデルは、経営理念の核となる家訓の維持を重視するファ
 ミリービジネスに適用でき、ファミリービジネスの限界が何に起因するのかを知
 るなど、個々のファミリービジネスで異なる経営の問題解決に有用である。
イ スリー・サークル・モデルは、直系血族の経営から従兄弟などを含む広い意味
 でのファミリービジネスへ変化していくようなファミリービジネスの時間による
 変化について、オーナーシップ、ビジネス、ファミリーの3次元から分類するモ
 デルへと展開できる。
ウ スリー・サークル・モデルは、ファミリービジネスの3つのサブシステムに対
 する利害関係者の関わり方を表し、ファミリービジネスの中小企業に関わるすべ
 ての個人は、自らを3つのサブシステムの組み合わせからなるセクターのいずれ
 か1つに位置づけて問題解決に関わる。
エ スリー・サークル・モデルは、ファミリービジネスの合理的経営のための戦略
 計画とファミリー固有のビジョンや目標との間の適合を図り、コンフリクト回避
 のためにファミリーメンバーの継続的関与と戦略を並行的に計画させるモデルで
 ある。
オ スリー・サークル・モデルは、ファミリービジネスの中小企業に内在する複雑
 な相互作用の分析の助けとなり、企業内外の人間関係における対立、役割上の困
 難な問題を理解する際に、それらが何に起因するのかを知るのに役立つ。
第12問(H30年)
 技術開発型ベンチャー企業が起業から事業展開で直面する障壁には、通常、以下
の【A欄】にあるダーウィンの海、デビルリバー(魔の川)、デスバレー(死の谷)と呼
ばれるものがある。これらの障壁は【B欄】のように説明できるが、その回避には
【C欄】に示されたような対応策が求められる。
 【A欄】のa〜cに示された障壁名、【B欄】の@〜Bに示された障壁の内容、【C
欄】の@〜Bに示された対応策の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答
群から選べ。

【A:障壁名】
 a ダーウィンの海
 b デビルリバー
 c デスバレー

【B:障壁の内容】
 @ 応用研究と商品開発ないし事業化との間に存在する資金や人材の不足などとい
  う障壁
 A 商品開発を事業化して軌道に乗せる際、既存商品や他企業との激烈な競争に直
  面するという障壁
 B 技術シーズ志向の研究のような基礎研究からニーズ志向の応用(開発)研究に至
  る際の障壁

【C:対応策】
@ 大手企業とのアライアンスやファブレス生産に取り組み、生産、販売、マーケ
 ティング、アフターサービスが一体となった体制などによって回避を試みる。
A 基礎技術や高い要素技術を必要とする領域は大学に任せ、TLOを活用して連
 携を積極的に行うことなどによって回避を試みる。

B 所有している特許権や意匠権などの知的所有権のうち、一部の専用実施権を第
 三者企業に付与することや、社内プロジェクトメンバーについての担当の入れ替
 え、メンバーの権限付与の見直しなどによって回避を試みる。

[解答群]
ア a−@−A   b−A−B   c−B−@
イ a−A−@   b−B−A   c−@−B
ウ a−A−B   b−@−A   c−B−@
エ a−B−A   b−@−@   c−A−B
オ a−B−B   b−A−@   c−@−A
第13問(H30年)
 わが国の企業が東南アジアの新興国に進出する場合に考慮すべき戦略的な課題に
関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 海外戦略の一環としてリバースイノベーションを展開するには、現地のニーズ
 に適合的な製品の開発能力が鍵になるので、研究開発機能の本国への統合が必要
 である。
イ 現地市場のボリュームゾーンで、売上を伸ばしている模倣部品を組み込んだ現
 地企業の廉価品に対抗するためには、自社の高性能部品を組み込んだ高価格な高
 機能製品を現地生産しなければならない。
ウ 電子製品や自動車などでは現地生産の進展にともなって系列を超えた域内取引
 が拡大しているので、日系サプライヤーにとっては現地での開発力や柔軟な生産
 対応力の強化が重要になる。
エ 東南アジアへの進出では海外直接投資による資産の所有が市場の成長への対応
 を鈍くするので、現地生産による内部化を避けてライセンシングによる生産委託
 を選択しなければならない。
オ 輸出代替型の東南アジア進出では、現地子会社で売れ筋の量産品の生産能力を
 高めることができれば、顧客密着を狙ったマスカスタマイゼーションを実現でき
 る。
第14問(H30年)
 企業組織を取り巻く状況の変化に柔軟に対応するために、従来の部門組織や恒久
的なグループ編成だけでなく、チームを採用することが効果的な場合がある。チー
ムに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 共通の目的を達成するためにバーチャルチームを形成して業務を遂行する際
 に、メンバー同士が直接顔を合わせた経験がある場合は、そうでない場合と比べ
 てタスク志向性が高くなり、社会的・感情的情報交換は少なくなる。
イ 遂行すべきタスクに必要なスキルや経験の多様性が低い場合は、個人よりチー
 ムの方が高い業績をあげる傾向にある。
ウ タスクフォースは恒常的に設置されている機能横断型チームであり、初期段階
 ではメンバーが多様性や複雑性への対処の仕方を学ぶために時間がかかることが
 ある。
エ チームで業務を遂行する場合は、一般に多くの時間と資源を必要とし、コンフ
 リクトが顕在化する傾向にある。
オ チームメンバー間の信頼関係が確立されていると、メンバーは他者が自分を利
 用しようとしていると感じる傾向が低くなり、自分の弱点をさらけだすことも可
 能になるため、リスク志向性は低くなる。
第15問(H30年)
 働き方や価値観の多様化とともに、外発的動機づけに加え、内発的な動機づけが
いっそう重要になっている。内発的な動機づけに関わる代表的な論者による説明と
して、最も不適切なものはどれか。

ア A.マズローの欲求段階説における自己実現欲求は、外発的に動機づけられる
 ものではなく、自分自身の理想を追い求め続けることを通じた内発的な動機づけ
 とも考えられる。
イ E.メイヨーとF.レスリスバーガーのホーソン実験では、従業員が自分たちの
 作業条件を決定することによって内発的に動機づけられていたことを発見し、こ
 れをホーソン効果と呼んだ。
ウ M.チクセントミハイは、特定の作業に没頭する中で、自身や環境を完全に支
 配できているという感覚が生まれることをフロー経験と呼び、そうした経験は他
 者からのフィードバックも必要とせず、給与などの報酬とも無関係であるとし
 た。
エ R.W.ホワイトが提唱するコンピテンス(有能性)概念では、環境と相互作用す
 る有機体の能力自体が、「うまくいった」という内発的な動機づけの源泉となる。
オ 内発的動機づけを概念として広く知らしめたE.デシは、報酬のためにやらさ
 れているのではなく、自分の好きにやっているという自己決定が重要であるとし
 た。
第16問(H30年)
 状況ごとに異なるリーダーシップを捉える条件適合理論の1つに、パス・ゴール
理論がある。パス・ゴール理論が注目する状況要因には、タスク特性や公式の権限
体系などリーダーが直接コントロールできない環境と、部下の経験や能力などの個
人的特徴がある。
 パス・ゴール理論が明らかにしたリーダーシップに関する記述として、最も適切
なものはどれか。

ア 構造化されたタスクに携わる従業員に対しては、指示型リーダーシップによる
 職務遂行が有効である。
イ 構造化されたルーチンワークに携わる部下に対しては、支援型リーダーシップ
 が高業績と高い満足度をもたらす。
ウ 行動の決定権が自分にはないと感じている従業員に対しては、参加型リーダー
 シップによって動機づけを行うことが有効である。
エ 職場内に深刻な価値コンフリクトが生じている場合には、参加型リーダーシッ
 プが従業員の高い満足度をもたらす。
オ 複雑なタスクに携わる高い能力を持つ従業員に対しては、より具体的な作業内
 容を与える指示型リーダーシップが高い満足度をもたらす。
第17問(H30年)
 集団のリーダーには、メンバーが集団目標を自身の目標として達成しようとする
ように働きかけることが求められるが、その手段としてメンバーを追従させるため
のパワーが必要である。個人や集団を追従させるパワーの源泉に関する記述とし
て、最も不適切なものはどれか。

ア 技術が高度化するにつれ、リーダーが専門的な知識やスキルを有している、あ
 るいは専門家からのサポートを得ていることが、メンバーを従わせる専門力
 (expert power)となる。
イ 職位権限など、組織から公式に与えられた地位は、それ自体が人々を従わせる
 正当権力(legitimate power)となる。
ウ メンバーが自身と同じような資質や個性を備えたリーダーに同一化する同一視
 力(referent power)が生まれる。
エ リーダーがメンバーの昇給や昇進、その他の好意的な労働条件を与えることが
 できる権限を持っている場合、メリットを求めて指示に従う報酬力(reward
 power)が生まれる。
オ リーダーがメンバーに集団内での不利益を与える場合、恐怖心に裏付けられた
 強制力(coercive power)が生まれる。
第18問(H30年)
 変化が激しい環境に適応する組織にとって、組織学習を促進していくことは不可
欠である。組織学習に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア シングルループ学習とは、ある目的とそれを達成するための行為の因果関係に
 ついての知識を、一度見直すことを意味する。
イ 組織内の人々は役割が規定され、その成果によって評価されるために、環境の
 変化に対応した新しい知識を獲得しても、それを直ちに個人や組織の行動の変化
 に反映できないことがある。
ウ 高い成果をもたらした組織のルーティンは、繰り返し使用することによって、
 より高い成果を生み出すことにつながるため、慣性の高い組織の方が長期適応す
 る能力は高くなる。
エ 低次学習よりも高次学習を促進するためには、明確なコンテキストのもとで、
 ある行為の結果に関する大量の情報を処理し、その行為の有効性を評価する必要
 がある。
オ 部門間を緩やかな結合関係にすることによって、傍観者的学習の可能性が低下
 するため、組織は全体として環境の変化に適応しやすくなる。
第19問(H30年)
 経営者と従業員は、賃金を支払って従業員に職務を委託するプリンシパルと、賃
金を受け取って委託された職務を遂行するエージェントの関係として考えることが
できる。次のような業績インセンティブ制度を仮定する。

 P=A+B×X

 ここで、Pは賃金、Aは固定給、Bは歩合、Xはエージェントの売上や生産量な
どの成果である。
 この業績インセンティブ制度に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア Aが0の場合、完全業績給を意味するので、すべてのリスクを従業員(エー
 ジェント)が負担することになるので、サボタージュが起こる可能性が高くなる。
イ Aの割合が小さいほど、一般に、組織階層の下位にいる従業員(エージェント)
 にとってハイリスク・ハイリターンになり、階層の上位で利益責任を負う管理職
 (エージェント)にとってインセンティブを高める制度となる。
ウ Bが0の場合、経営者(プリンシパル)側がすべてのリスクを負担することにな
 るので、リスク回避的傾向の高い従業員(エージェント)は積極的に職務にコミッ
 トする傾向が高くなる。
エ 環境リスクが小さく、経営者(プリンシパル)が従業員(エージェント)の行動
 のモニタリング能力が高い状況では、Aの割合が小さく、Bの割合が大きい業績
 インセンティブ制度が望ましい。
オ 業績の測定が難しい職務に携わる従業員(エージェント)ほど、Bの割合が高い
 業績インセンティブ制度のもとでとく動機づけられる。
第20問(H30年)
 イノベーションを起こすために必要な専門知識が社会に分散し、オープンイノ
ベーションや企業間システムの重要性が高まるとともに、オープンイノベーション
の解釈も広く多義的になってきている。
 チェスブローが提唱したオリジナルのオープンイノベーションや企業間システム
に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア オープンイノベーションは、基盤技術の開発などのコラボレーションというよ
 りも、事業化レベルのコラボレーションを促進するという特徴がある。
イ オープンイノベーションを促進するためには、ネットワーク外部性がある部品
 を開発している企業同士が共通の規格を採用する必要がある。
ウ オープンイノベーションを通じて、自社内で技術開発投資を行う必要がなくな
 るため、コストやリスクを負担することなく、新製品を開発できるメリットがあ
 る。
エ 自社内の非効率な業務のアウトソースを通じて、オープンイノベーションを低
 コストで行うことができるようになる。
オ 製品アーキテクチャーがモジュラー化するほど垂直統合が進むため、企業間の
 水平的連携システムを通じたオープンイノベーションが重要になる。
第21問(H30年)
 組織の成長や変革に介入する経営コンサルタントにとって、企業組織のライフサ
イクルに応じた課題や特徴についての理解が必要になることがある。組織のライフ
サイクルを、起業者段階、共同体段階、公式化段階、精緻化段階に分けて考えると
き、それぞれの段階に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア 持続的な成長を迎える共同体段階では、従業員は自身が共同体の一員であると
 強く感じるため、職務の割り当てが専門化され、階層化が進むとともに中間管理
 職への権限委譲が必要になってくる。
イ 精緻化段階では、官僚制のもたらす形式主義的な弊害を克服するために、場合
 によっては公式のシステムを単純化し、チームやタスクフォースを活用して小企
 業的な価値観や発想を維持するために組織全体に絶えず新しい挑戦や努力を推奨
 する必要が生じる。
ウ 創業者が創造力の高い技術志向の経営者の場合、起業者段階では従業員は非公
 式で非官僚主義的なコミュニケーションで管理されることが多い。初期の市場が
 成長し、それに伴い従業員が増加すると、財務管理などを含めた、組織全体を統
 率するリーダーシップを持った経営者が必要になる。
エ 組織の規模も大きくなり公式化段階になると、規則や手続き、管理システムの
 公式化が進み、戦略的意思決定や業務的意思決定をトップマネジメントに集権化
 する必要が生まれ、トップが各事業部門を直接コントロールするようになる。
第22問(H30年)
 職務遂行に当たって個人が抱く価値に対するセルフ・イメージは、キャリア・ア
ンカー(例えば、技術的・機能的コンピテンス、全般的な管理コンピテンス、自律
と独立、保障と安定、企業家的創造性、純粋な挑戦、奉仕と社会貢献、ライフスタ
イル)と呼ばれる。キャリア・アンカーに関する記述として、最も適切なものはど
れか。

ア キャリア・アンカーは、現状を否定する学習を阻害する。
イ 個人が抱くキャリア・アンカーは、職種や企業ごとに類似していく傾向が見ら
 れる。
ウ しっくりこないという経験を通じて自らのキャリア・アンカーを反省し、転職
 や働き方の変化につながる。
エ 人々は、生来の価値であるキャリア・アンカーに従って、職業を意識的に選択
 する。
オ 矛盾するキャリア・アンカーは、仕事経験を通じて1つに絞り込まれていく。
第23問(H30年)
 労働者の過労死につながりかねない働き方の問題は、長時間労働だけが原因とな
るのではなく、職場のストレスが強く関連している。企業のストレス管理はスト
レッサーそのものの解消だけではなく、ストレッサーを解消しようとする介入のプ
ロセスが重要であると言われている。
 ストレス管理における介入のプロセスに関する記述として、最も適切なものはど
れか。

ア 過去に大きな変化を克服した経験をしている従業員に対しては、ストレス管理
 における介入によってトラウマを呼び起こさないようにしなければならない。
イ 従業員がストレスを抱えていることを知られることで不利益を被らないよう、
 現場の管理者をストレス管理における介入プロセスに関わらせないようにする。
ウ ストレス管理における介入が従業員にさらなるストレスにならないよう、従業
 員には介入が行われることを知らせないほうが良い。
エ ストレス管理の対象となる従業員を、介入案の策定や実施のプロセスに積極的
 に関わらせ、自身のストレッサーを自覚させるようにする。
第24問(H30年)
 労働契約の期間に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、一定の事
業の完了に必要な期間を定める労働契約については考慮しないものとする。

ア 期間の定めのない労働契約を締結している労働者については、いかなる場合で
 も定年年齢まで解雇することはできない。
イ 期間の定めのない労働契約を除き、1年を超える労働契約は締結できない。
ウ 期間の定めのない労働契約を除き、満60歳以上の労働者との間に締結される
 労働契約の期間は、最長5年である。
エ 期間の定めのない労働契約を除き、薬剤師の資格を有し、調剤業務を行う者と
 の間に締結される労働契約の期間は、最長3年である。
第25問(H30年)
 労働基準法に定める割増賃金に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 管理監督者を深夜に労働させた場合、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5
 分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
イ 契約社員を年俸制で雇用する場合、年俸額が通常の労働時間の賃金に相当する
 部分と時間外労働による割増賃金に相当する部分とに明確に区分されているケー
 スでは、時間外労働の時間にかかわらず、年俸の月割額とは別に割増賃金を支払
 う必要はない。
ウ 毎週日曜日と土曜日を休日とする完全週休2日制の企業の場合、日曜日と土曜
 日のどちらの休日労働についても割増賃金率を3割5分以上としなければ、労働
 基準法違反となる。
エ 割増賃金の算定基礎から除外される賃金は、@家族手当、A通勤手当、B別居
 手当、C子女教育手当、D住宅手当、E臨時に支払われた賃金、F1カ月を超え
 る期間ごとに支払われる賃金の7種類のみであり、実際に支払われている手当が
 この7種類に該当するかどうかは、その名称により判断することになる。
第26問(H30年)
 就業規則の作成や届け出、周知等に関する記述として、最も適切なものはどれ
か。

ア 常時10人以上の労働者を使用する事業場の使用者は、就業規則を作成した場
 合、もしくはすでにある就業規則を変更した場合、14日以内に所轄の労働基準
 監督署長に届け出て、その承認を得なければならない。
イ 常時10人以上の労働者を使用する事業場の使用者は、その労働者のうち大半
 がパートタイマーであっても、就業規則を定めて所轄の労働基準監督署長に届け
 出なければならない。
ウ 使用者は、就業規則を作成した場合、常時事業場の見やすい場所に掲示する方
 法では足りず、全労働者に配布する方法によって周知させなければならない。
エ 使用者は、就業規則を作成した場合、もしくはすでにある就業規則を変更した
 場合、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合
 は労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。
第27問(H30年)
 懲戒に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、本問におけるいずれ
の処分も、就業規則において明確に規定されている懲戒事由および処分内容に即し
てなされるものであることとする。

ア 過去に懲戒の対象となった行為について、重ねて懲戒することができる。
イ 自己都合によって退職した直後に、解雇に相当する懲戒事由が発覚した元従業
 員に対し、懲戒解雇基準を準用して退職金を不支給とすることは、いかなる場合
 でも認められない。
ウ 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給
 は、1回の額が平均賃金の1日分の額を超え、総額が1賃金支払期における賃金
 の総額の20分の1を超えてはならない。
エ 懲戒処分によって出勤停止を命じた従業員に対する賃金は、出勤停止期間が適
 切な範囲内のものである限り、その出勤停止期間に対応する分は支給しなくても
 よい。
第28問(H30年)
 企業のマーケティング・チャネルに関する意思決定として、最も適切なものはど
れか。

ア A氏は、自ら経営するメーカーが生産するLEDデスクライトの大量生産のテ
 スト稼働が始まったことから、新たに直販のECサイトを開設し、消費者の持ち
 込んだデザインを反映した完全オーダーメードのデスクライトの受注生産に乗り
 出した。
イ 希少な天然繊維を用いた原料を独占的に調達することができ、その素材を用い
 たシャツを最大年間2,000枚程度供給することのできるメーカーB社は、少数の
 取引相手に販売を集約する目標を設定し、先端ファッション雑誌に広告を出稿す
 るとともに、国内に250店舗を有する総合スーパーでの全店取り扱いを目指して
 バイヤーとの交渉に着手した。
ウ 携帯通信端末の修理に長年携わってきたC社は、大手端末メーカーと変わらな
 い品質の部品調達が可能になったため、格安SIMカードによる音声通話・デー
 タサービスを提供する通信事業者と提携し、業務用オリジナル端末と通信サービ
 スを組み合わせたパッケージ商品の提案を開始した。
エ 手作りの知育玩具の製造卸D社の商品Xは、テレビのビジネス番組で報道され
 たことがきっかとなり、現在では受注から納品まで1年以上を要するほどの大
 人気ブランドになっている。そこで、同社は商品Xの普及モデルYを開発し、海
 外の大規模メーカーへの仕様書発注による商品調達を行い、100円ショップで商
 品Yを同一ブランド名で販売することを検討し始めた。
第29問(H30年)
 近年の流通チャネルの潮流に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア インターネット上の仮想ショッピング・モールでは、テナント店舗数が増加
 し、取扱商品の幅と奥行きが拡大すると、購入者数と流通総額(取扱高)が増加す
 る効果が見られるが、消費者の探索効率が高まらない限り、その効果には限界が
 ある。
イ オムニ・チャネル・リテイリングとは、小売業者が複数の業態のチェーンスト
 アを経営することを通じて性格の異なる消費者クラスターごとに別々のチャネル
 で対応するための考え方である。
ウ 電子商取引のプラットフォームのうち、「商人型プラットフォーム」と呼ばれる
 形態がとられる場合、プラットフォームのユーザー数の増加がサービスの利便性
 を高めるという意味でのネットワーク外部性が発生しにくい。
エ 電子商取引のプラットフォームのうち、「マーケットプレイス型プラット
 フォーム」と呼ばれる形態がとられる場合、プラットフォームを介した流通総額
 (取扱高)がその経営主体の会計上の売上高として計上される。
第30問(H30年)
 マーケティング計画に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア POSデータを用いた最も基本的な分析手法の1つはアクセス解析である。こ
 れは、購買金額の規模によって顧客をいくつかのグループに分け、それぞれのグ
 ループの顧客による売上や利益への貢献度を測定するものである。
イ 首都圏在住の大学生をターゲットとする就職活動支援サービスの展開を計画す
 る企業が、ターゲットの潜在ニーズを把握するために標本調査を実施する場合、
 母集団の規模とその男女構成比が事前に把握できるため、その比率に応じた標本
 抽出を行うことができる。この種の標本抽出法を系統的抽出法という。
ウ マーケティング計画の初期段階においては二次データが用いられる場合が多い
 が、二次データは内的データと外的データに分類される。小売業者にとっては、
 POSデータなどの販売データは外的データである。
エ 洋菓子メーカーA社は、SNSのフォロワーを100万人以上もつ若手人気モデ
 ルと契約し、SNSを用いて若者をターゲットにしたスイーツに対するブランド
 のプロモーションを強化している。その狙いは、早期に前期大衆(early majority)
 への普及を図ることである。これをキャズムを超えるという。
第31問(H30年)
 製品開発に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 「製品アイデア」とは企業が市場に提供する可能性のある製品を指すが、「製品
 コンセプト」といった場合には、これを顧客の立場から捉え、その製品が誰に
 とって、どのような時に、どのような問題解決をするものであるかを表現したも
 のである。
イ 製品開発においては、顧客の潜在的な欲求や期待についての情報を様々なリ
 サーチ手法を用いて捕捉し、そうしたニーズに基づいた開発を行うことが革新的
 な製品アイデアを導くための定石である。
ウ 製品開発の出発点は、新製品のアイデアを創出する過程であるが、そこでは社
 内外双方での情報収集が行われる。そのうち、社内におけるアイデアの源泉は研
 究開発部門と経営トップの2者に集約化されている。
エ 製品ライフサイクルの成熟期に差し掛かった製品のマーケティングにおいて
 は、ユーザー数の拡大によって製品の売上向上を図る「市場の修正」と製品価格の
 値下げによる需要喚起を狙った「価格の修正」の2つの組み合わせによるリポジ
 ショニングを実施する必要がある。
第32問(H30年)
 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 D氏が所有・経営するギョーザレストランは、現在20店舗を@チェーンストア・
オペレーションで独立運営している。ランチタイムもディナータイムも毎日盛況な
状況が続いており、商圏の1人暮らしの顧客からのリクエストに応える形で持ち帰
りサービスも始めている。そのような背景から、AD氏はさらなる顧客満足の向上を
目指している。

(設問1)
 文中の下線部@に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア D氏のレストラン・チェーンの店舗は、立地特性に応じて若干の違いをもた
 せているが、基本的に同形であり、チェーン本部が相当程度の中央統制を行っ
 ている。
イ D氏のレストラン・チェーン本部と契約し、加盟店としてこのレストランを
 経営したいと申し出る企業が目立っている。この種の契約型チェーンはコーポ
 レート・チェーンと呼ばれる。
ウ D氏のレストランは同一の所有の下で経営されている。この種のチェーンは
 フランチャイズ・チェーンと呼ばれる。
エ D氏はレストランをチェーンストア化するにあたって、業務マニュアルの作
 成やスタッフの研修を行わないことにした。サービスを工業化・標準化するこ
 とが不可能であることがその理由である。
(設問2)
 文中の下線部Aに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア D氏のレストラン・チェーンでは顧客の満足度を測定するために、この
 チェーンが提供するスマホアプリを活用して顧客へのアンケートを実施し、顧
 客のリクエストをすべて実現することを最優先している。
イ D氏のレストラン・チェーンは、低成長の市場環境での厳しい競争に打ち勝
 つためにサービス・マーケティングの7Psの充実に努めているが、そのうち
 の1つであるサービスが提供される“Physical Evidence(フィジカル・エビデ
 ンス)”には、店舗のロゴやサービスマークも含まれる。
ウ D氏はレストラン・チェーンの従業員の動機づけを行うために自社の行動規
 範をわかりやすくまとめた“CREDO(クレド)”と呼ばれるカードを全従業員に
 配布し、毎日の始業時にその内容を相互に確認しているが、これはとくに調
 理・接客技術の向上に直接的に有効である。
エ D氏はレストラン・チェーンの店舗網拡大に先駆けて、大手のレストラン予
 約サイトと契約して、顧客が所定の日時にお得なコース料理を事前に予約する
 ことのできるバウチャーの販売を始めたが、これは直接流通の経路の拡張によ
 るサービス拡販の典型例である。
第33問(H30年)
 マーケティング概念に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 近年では様々なソーシャルメディアが普及しており、とくにSNSを活用した
 顧客関係性の構築に基づくマーケティングのあり方は、ソーシャル・マーケティ
 ングと呼ばれている。
イ ソサイエタル・マーケティング・コンセプト(societal marketing concept)で
 は、標的市場のニーズや欲求、利益を正しく判断し、消費者と社会の幸福を維
 持・向上させる方法をもって、顧客の要望に沿った満足を他社よりも効果的かつ
 効率的に提供することが営利企業の役割であるとしている。
ウ マーケティングは営利企業の市場創造においてだけでなく、美術館や病院、
 NPOなどの非営利組織にも適用されているが、非営利組織のマーケティングに
 おいてはマーケティング・ミックスのうちの価格要素の持つ相対的重要性は低
 い。
エ マーケティング・ミックスの4つのPは買い手に影響を与えるために利用でき
 るマーケティング・ツールを売り手側から見たものであるが、これらを買い手側
 から見ると4つのCとしてとらえることができる。4PsのPlaceに対応するもの
 は、Customer cost、つまり顧客コストである。
オ マーケティング・ミックスは企業が設定した標的市場においてそのマーケティ
 ング目標を実現するための一貫したツールとしてとらえられるが、そのうちの販
 売促進の修正は、他のマーケティング・ミックス要素の修正と比べて長期間を要
 するものである。
第34問(H30年)
 価格に対する消費者の反応に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 2つの価格帯を用意した場合と、それらにさらなる高価格帯を追加し3つの価
 格帯を用意した場合のいずれにおいても、金銭的コストが最小となる低価格帯の
 商品が選択されやすい。
イ 健康効果が期待される菓子について、一般的に価格が高いとされる健康食品と
 して購入者が認識する場合のほうが、嗜好品として認識する場合よりも高い価格
 帯で受容されやすい。
ウ 消費者は、切りの良い価格よりも若干低い価格に対して反応しやすい。これを
 イメージ・プライシングと呼ぶ。
エ マンションを購入した人は、家具や家電品をあわせて購入することが多い。高
 額商品を購入した直後の消費者は、一般的に、支出に対して敏感になり、値頃感
 のある商品を求めやすいことが心理的財布という考えで示されている。
第35問(H30年)
 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 プロモーションの役割は、@広告、販売促進、人的販売、パブリックリレーション
ズ(PR)の4つの手段を用いて、製品やサービスに関する情報を伝達し、魅力をア
ピールし、販売を促進することである。プロモーション効果を高めるためには、そ
の目的や、対象となるA製品・サービスの特性および知名、理解、好意・選好、購
買、再購買といった購買プロセスの段階に応じて、4つのプロモーション手段を使
い分けたり、適切に組み合わせたりすることが重要である。

(設問1)
 文中の下線部@に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 2016年度の日本の広告費に関する注目点は、製作費を含むインターネット
 広告費が、はじめて、テレビメディア広告費を上回ったことである。
イ 従業員と家族を対象にした運動会や部署旅行および従業員の家族を対象にし
 た職場見学会を実施する企業が出てきている。これらの活動はPRの一環と捉
 えることができる。
ウ 人的販売は、テレビ広告と比較して、到達する消費者1人当たりの情報伝達
 コストが小さい。
エ パブリシティは、企業や製品に関する情報の公表を通じて、新聞や雑誌など
 のメディアに取り上げてもらうための広告活動の1つである。
(設問2)
 文中の下線部Aに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 4つのプロモーション手段の重要性は、対象が消費財か生産財かによって変
 わるが、いずれの場合も、広告が最も重要である。
イ 企業が広告を作成する狙いには、再購買時のブランド想起を促進したり、購
 買後に消費者が感じる認知不協和を減らしたりする効果を生み出すことが含ま
 れる。
ウ 製品やサービスに対する知名率や理解率が高いものの購買に至らない場合、
 買い手の当該製品やサービスに対する関与の高低にかかわらず、短期的なイン
 センティブを提供する販売促進が最も有効である。
エ プッシュ戦略と比較して、プル戦略の場合、一般的に、人的販売が重要視さ
 れる。
第36問(H30年)
 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 顧客リレーションシップのマネジメントにおいて、企業は、@収益性の高い優良顧
客を識別し、優れた顧客価値を提供することで関係性の構築、維持、強化に努めAブランド・ロイヤルティなどの成果を獲得することを目指している。

(設問1)
 文中の下線部@に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 初めて購入した顧客がリピート顧客、さらには得意先やサポーターになるよ
 うに、関係性にはレベルがある。自分のすばらしい経験を、顧客が他者に広め
 ているかどうかは、関係性レベルの高さを判断するための手段となる。
イ パレートの法則をビジネス界に当てはめると、売上の50%が上位50%の優
 良顧客によって生み出される。
ウ 優良顧客の識別には、対象製品の購買においてクロスセルやアップセルが
 あったか否かは重視されない。
エ 優良顧客の識別のために用いられるRFM分析とは、どの程度値引きなしで
 購買しているか(Regular)、どの程度頻繁に購買しているか(Frequency)、ど
の程度の金額を支払っているのか(Monetary)を分析をすることである。
(設問2)
 文中の下線部Aに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 関係性が構築され、それがさらに維持、強化されることで、特定顧客におけ
 る同一製品カテゴリーの購買全体に対して自社製品が占める割合、つまり市場
 シェアの拡大が見込める。
イ 関係性が構築されると、同一製品を再購買する傾向である「行動的ロイヤル
 ティ」が高まる。それはブランド・コミットメントと言い換えられる。
ウ 消費者は、惰性、サンクコストや所有効果により、現在利用している製品や
 サービスを変更しない傾向がある。こうした傾向が、真のロイヤル顧客の識別
 を難しくする。
エ 製品やサービスの購入および利用に対してポイントを付与することにより再
 購入を促し、継続的な取引の維持を目指そうとする「ロイヤルティ・プログラ
 ム」は、多くの企業が採用可能な、経済効率の非常に高い施策とみなされてい
 る。
第37問(H30年)
 ブランドマネジメントに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア これまでに製品を投入したことのないカテゴリーにおいて、すでに他のカテゴ
 リーで実績のあるブランド名を用いて新製品を投入することを「ブランド・リポ
 ジショニング戦略」と呼ぶ。
イ ターゲットとする性別・年代、価格帯やイメージが異なる複数の製品ラインを
 展開する場合、メーカー名などを冠した統一的なブランドと個々のブランドを組
 み合わせた「ダブルチョップ戦略」が適切である。
ウ ブランド間の知覚差異は大きいが製品自体やその購買への関与度は低い、とい
 う状況でのブランド展開においては、「マルチ・ブランド戦略」が採用されやす
 い。
エ ブランドには、メーカー名がつけられる場合や独自の商品名がつけられる場合
 がある。前者をプライベート・ブランドと呼ぶ。
第38問(H30年)
 ブランドカテゴライゼーションに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 消費者の長期記憶の中で、ブランド情報は構造化され、保持されている。購買
 意思決定プロセスにおいて、消費者は、保持するすべてのブランド情報を均等に
 検討し、1つのブランドに絞り込む。
イ 「想起集合」とは、消費者が購入を真剣に検討する対象のことであり、「考慮集
 合」と呼ばれることもある。
ウ 「想起集合」に入るためには、当該製品カテゴリーの中で際立った異質性をもた
 せることが重要である。
エ 「保留集合」とは、判断に必要な情報が不足しているため、購買の意思決定が先
 送りされているブランドのことである。